会報「SOPHIA」 平成17年5月号より

家族ってなんだろう (5.14憲法週間記念行事)


記念行事特別委員会
委員 堀 江 亮 介

 平成17年5月14日、毎年恒例の憲法週間記念行事が中区役所ホールで開催された。

 記念行事特別委員会は次回の行事から広報委員会の一部会として活動することが決まっており、独立の委員会としては最後の行事となり、高橋恭司チーム長を中心に企画・準備に当たった委員たちには自然気合がみなぎっていた。今回のテーマは「家族のあり方」であり、憲法週間になぜ家族?の疑問はあろうが、価値観が多様化し、結婚する自由・しない自由、産む自由・産まない自由、産んだ後も働く自由がクローズアップされる現代において、自己決定権、幸福追求権に直結するまさに憲法週間にふさわしいテーマである。

 第1部は、マルチタレントの向井亜紀氏を招き、同氏の出産・子育ての経験を踏まえた講演をお聞きした。向井氏は、ご存知の通り司会、エッセーなど幅広く活躍されているが、第1子妊娠中に発見された子宮頸がんによる子宮切除、その後アメリカで代理母出産という選択をされ、双子の男の子を授かり、現在子育て奮闘中である。代理母出産は、向井氏の選択によって広く一般に認知されたものであるが、その是非についてはさまざまな立場から賛否両論あり、産科婦人科学会から「望ましくない」との意見が出され、わが国では認可されていないそうである。やむなくアメリカに渡って代理母出産をおこなった向井氏は、帰国後心無いバッシングにさらされたが、夫である格闘家の高田延彦氏に励まされてそれを乗り越えてきた体験談は、タレントらしいソフトな語り口の中にも非常な強さを感じさせ、聴衆の胸を打つものであった。ちなみに区役所は向井氏と子供たちの母子関係を認めず、出生届は不受理となったため、現在弁護士を立てて異議申立中とのことである。「分娩者が母親」という血統主義の解釈が生殖医療の進歩によって絶対とはいえなくなったために生じた難しい問題である。

 第2部は、現代における子育てのあり方についてのパネルディスカッションであり、向井氏に加えて、中日新聞文化部部長林寛子氏と、社会福祉法人新瑞福祉法人から橋本崇史氏にご参加いただき、熊田登与子弁護士がコーディネーターを務めた。林氏は、典型的な男性社会である新聞社においてキャリアを積みながら、出産育児の体験を中日新聞と東京新聞に「子産み子育てホンネ録」として連載され好評を博し、同連載は「子ども産みます」という本に単行本化された。橋本氏は、未だわが国では珍しい男性保育士として名古屋市瑞穂区の学童保育所に勤務され、主に障害児保育、学童保育の第一線に携っておられる。

 このような方々の貴重な体験・ご意見をコーディネーターの熊田弁護士が非常にうまく引き出され、時には鋭く切り込み、まとめられた。大変素晴しいパネルディスカッションであり、女性の働く権利と子供の健全な発達を保障するために、われわれに何ができるか、何をすべきか、大いに考える機会になった。