シンポジウム「塀の中の障害者と高齢者たち」

会 員  湯 原 裕 子

 「塀の中の障害者と高齢者たち〜塀の中と外・人間の尊厳って何だろう〜」
 2004年12月5日、社団法人アムネスティ・インターナショナル主催、名古屋市教育委員会、そして名古屋弁護士会も後援団体となった上記シンポジウムが栄ガスビルで開催され、私が司会を務めました。
 山本譲司氏の講演に引き続き、車椅子で名古屋市市議会議員を務められている斎藤まことさん、法務省矯正局の方2名を加えた4名をパネリストとした鼎談が行われ、会場は立ち見が出る盛況でした。

 山本譲司氏の講演
 山本譲司氏は元民主党議員で、衆議院議員2期目を迎えた2000年9月、秘書給与詐取事件により、懲役1年6ヶ月の実刑判決を受ける。その後服役し、出所後、事件と獄中内での出来事を当時の膨大な手紙や日記を頼りにまとめた著作「獄窓記」が新潮ドキュメント賞を受賞されています。
 私もこのシンポジウムの予習のために読みましたが、秘書給与問題の顛末や辻元清美氏との確執の部分はさておき、障害を有する受刑者の処遇の実態について、冷静に観察分析されていて、興味深かったです。
 講演では、日常の生活も満足にできない障害者や高齢者の受刑者の糞尿の始末や食事などを「世話係」に任命された他の受刑者が行い、数色のロウソクのかけらを色分けさせ作業後にはそれを再びかき混ぜて同じ作業をさせるたりするという作業実態、さらには出所後彼らの受け入れ先がないことなど、高齢者・障害者の受刑者を取り巻く環境が厳しいものであることが報告されました。
 そしてこのような受刑経験をきっかけにして、山本氏がシェルターの開設や行政機関や他の社会福祉法人との連携のための仕事に関わるようになったことを話されました。

 鼎 談
 今回は、矯正局関係者の方が参加されましたが、「役人」の方がアムネスティという一市民団体主催の会に参加するということは、これまであまり考えられなかったことです。名古屋刑務所事件をきっかけに、法務省も開かれた行刑施設にすべく姿勢が変化しているのではないかと思いました。参加されたお二人から、受刑者が増加し施設が限界にきていること、受刑者の冬場の衣類に気を遣ったり、身体的機能をできるだけ維持するため軽作業をやらせていること、お役所の方でも釈放時保護のために奔走し、かなり苦労していることが語られました。
 これに対し、実際に車椅子の障害者である斎藤まことさんが、「障害者というのはそもそもそれだけで人権を制約されている存在である」との立場から意見を述べられ、最終的には、やはり社会的な基盤の整備や関係各所の連携をもっと図っていく必要があることを再確認して終了しました。

 最後に
 高齢者・障害者の問題は取り組むべき課題が多い問題でありますが、受刑者という局面においてはさらに困難な側面が多く、「臭いものには蓋を」と目を背けたくなります。
 しかしその問題に取り組んでいる方々の話を聞き、問題の実態を知り、その方々の情熱的な活動内容を知る機会を持つことが、社会の理解と受け入れ態勢作りに繋がると思いますので、今後もこのような講演会に参加して考えてゆきたいと思います。