11月12日に行われた実務家教員研修会では、主に刑事関係科目を中心とし、実際の法科大学院での授業の状況をご報告いただいた上で、参加者との間で情報と意見交換を行った。
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前田義博会員(愛知大学)の報告
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既習者1年(今年度19名)の秋学期に配当の「刑事演習」と「刑事訴訟法演習」を担当。研究者教員と実務家教員の複数担当制。法務省法務総合研究所編集の問題集を教材に使用し、予め学生に当該授業日に取り上げる問題を知らせ、学生は前日正午までに「答案構成」をメールで提出。担当教官が検討して授業にのぞむ。授業当日、報告者を指名し、報告者の「答案構成」を配布した上で、双方向で授業を行う。授業終了後、学生3名に実際の答案を作成させて提出させ、実務家教員が添削して全員に配布。研究者教員が別に作成した解説を配布する。
学生は、外にも多くの起案の課題をかかえてかなり大変。多くの学生は基本書や「シケタイ」(試験対策講座という予備校本らしい)、下敷き判例等を調べた上で起案しているようだ。「答案構成」を事前に検討するための時間確保は難しく、来年40名に学生が増えたとき(しかも既習1年生と未習2年生の混合)にどう対応するかは問題である。また、理論的な問題については、研究者教員と実務家教員とはレベルが違うし、実務家教員が答案を添削するのもなかなか難しい。
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授業で取り上げた問題の例
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内縁の夫が妻の連れ子を虐待して死亡させた事例。夫が子に暴力を加えているのを知りながら、過去に制止しようとして自らも夫から暴力を受けたこと等から、見て見ぬふりをした妻の罪責を問う問題。地裁と高裁で結論が分かれた事例で、不真正不作為犯の可罰性、作為義務の有無、不作為の正犯と幇助犯の区別基準などの刑法上の論点が含まれている(らしい)。問題と学生が実際に作成した「答案構成」、添削後の「答案」が資料として配付された。
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意見交換と感想等
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質疑応答の後、他の法科大学院の状況の紹介と活発な意見交換が行われた。刑事関係の基礎的な演習の授業は、研究者教員のみが担当している大学も多いようで、実務家教員が中心となる総合裁判演習や刑事模擬裁判などの科目が本格化するのは、来年度以降になりそうである。理論的部分は研究者教員に頼らざるをえないが、実務家が関わる以上、生の事実を重視し、有罪無罪の感覚なども意識することが必要ではないか、学生は結論を欲しがるが答えが一つではないことを教えることも重要ではないかという意見が出された。学生は、大量の課題に追われて大変であるが、様々な自主的なゼミを企画しているし、「臨床実務」は学生にも人気で、試験対策ばかりに気をとられている訳ではないこと、このたび発表された新司法試験の問題にはかなり実務的な要素も含まれており実務家教員の果たす役割は大きいとの指摘もあった。
私が学生の頃は、大学の授業が突然休講になると喜んだものだが、法科大学院の学生は違うらしい。学生が教官の更迭運動を起こした大学もあるそうで(他地域)、学生が、お金と時間と人生をかけて勉強にきている以上、要求するレベルは高く、教官に対する視線も厳しい。今後の研修会では、学生の側の意見なども紹介していく予定である。
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