大学教授的生活 法科大学院の学生気質

 
会員(愛知大学法科大学院教授)
森 山 文 昭

担当科目
 私は現在、愛知大学法科大学院で民法・租税法・法曹倫理・司法制度論を担当しています。民法は、何科目もあって年中開講しており、一番時間を使います。春学期(前期)に法曹倫理が終わり、秋学期(後期)の今、司法制度論が進行中です。今年はカリキュラム編成の関係で、租税法の履修登録がなかったので、助かりました。

2 とにかく忙しい
 法科大学院の専任教員を担当してまず感じることは、とにかく忙しいということです。
 講義の準備には、実際の講義に使う時間の何倍も時間を使います。学生の書いた答案の添削(これがまた時間がかかります)や、個別の学生の質問に答える時間(オフィスアワー)も必要です。学生に負けず劣らず、私も毎日の勉強に必死です。
 これに加えて学内外の行政的事務に関する仕事等もありますから、せいぜい週に3コマか4コマの授業を担当するのが精一杯といったところです。

3 学部の学生と比べると
 私は、法科大学院の構想が出る少し前ころから学究生活にあこがれ、大学の専任教員になりたいと準備をしてきました。その過程でかなりの非常勤講師を経験し、2002年にはやっと名城大学の専任教員になり、学部の授業もいろいろ担当してきました。
 これらの学部生と比べると、法科大学院の学生は本当によく勉強します。愛知大学の図書館は、毎日朝の7時から夜の1時過ぎまで、こうこうと明かりがともっています。そして、彼らは非常に熱心で、勉学に対する意欲がとても積極的です。授業中も、どんどん質問しますし、こちらから指名しなくても、次々と手をあげて発言してくれます。
 名城大学のゼミでは、学生といっしょによく飲み、よく遊んで、非常に楽しい時をすごすことができました。しかし、法科大学院では、とても学生に「遊ぼ」とは言えません。彼らは、必死なのですから。遊べないのは辛いですが、こうした学生たちと接していると、自然と情が移ってきます。「何としても司法試験を通してやりたい」と、ついこちらも肩に力が入ってくるのです。

4 学生の意識は健全
 法科大学院の学生と接していて一番感じることは、やはり法曹を志す人はすばらしいということです。みんな、少しでも困った人の役に立ちたい、人権を守りたいという真摯な気持で、まじめに物事を考えています。とにかく試験に受かりさえすればいいということではなく、将来どういう法曹になるのかということを真剣に考えています。
 私は、法曹倫理と司法制度論で、あるべき弁護士の姿をそれなりに伝える努力をしているつもりですが、学生たちは私のつたない話もしっかり受け止めてくれます。法曹界の未来もまだまだ捨てたものではない、というのが率直な印象です。

5 最後に研究の話を少し
 このように繁忙を極め、研究の時間はほとんど確保することができません。しかし、今年は弁護士論について論文を書きました。もうじき日弁連業革委員会の編集で『いま弁護士は、そして明日は?』(エディックス)として出版される予定です。次は、民主主義論について研究したいなと考えているところです(まだとても論文には手が届きませんが)。