【第47回日弁連人権擁護大会】    



第47回日弁連人権擁護大会に参加して

会 員 奥 村 哲 司

  本年10月7日及び8日に宮崎市ワールドコンベンションセンターサミットにて、日弁連人権擁護大会が開催された。台風の近づく状況の中、台風情報に気を配りながらも、全国から多くの会員が集まった。
 7日のシンポジウムでは、第3分科会において当会の村上満宏会員による報告がなされ高い評価を得ていた。
 8日の人権擁護大会では、「2003年度下期から2004年度上期までの事業活動報告」「シンポジウム報告」がなされた後、「司法制度改革に関する報告」「監獄法改正をめぐる情勢」の特別報告がなされた。
 その後、「多民族・多文化の共生する社会の構築と、外国人・民族的少数者の人権基本法の制定を求める宣言」が採択され、4つの決議の議事に移ったが、その中で「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」において、決議案のうち犯罪被害者の権利の確立と支援に関する4行について、全体との整合性等の観点から多くの異議が述べられ、修正動議にまで進展したかと思いきや、執行部において当該4行につき削除の上可決という、手続き的にもたついた感のある決議となった。なお、他の3つの決議に関しては異議なく可決された。
 次期大会は、平成17年11月10日及び11日に鳥取市にて開催される。11月7日が「松葉がに」の解禁日であるとのことで、来年の大会も盛り上がることを期待したい。


第1分科会
『多民族・多文化の共生する社会を目指して〜外国人の人権基本法を制定しよう〜』

会 員  宮 崎   真

 開幕は、手話や日韓中西の通訳で始まり、多民族多文化を象徴するものであった。
 外国人が日本総人口の1.5%を占め、外国人登録国籍数186が存在する外国人や民族的少数者の共生状況を説明され、管理から人権保障主体となる外国人基本法の制定の必要性が問題提起・基調報告された。外国人の人権基本法要綱試案においては、外国人の原則的人権保障、民族的アイデンティティを保持する権利、人種差別の撤廃を軸とし、独立の人権保護機関、民族教育の機会の確保等を盛り込まれている。14NGO団体も参加し、在日コリアン、在留特別許可を受けた方、難民の方から当事者の主張もなされた。50年以上日本に生活しても選挙に行ったこともないこと、朝鮮学校とのダブルスクールに通わなければならないこと、在留資格がなく医療も受けられなかったこと、退去強制で子どもの教育を断ち切ることが非人間的であることなど当事者の口から聞く生活上の支障は本当に切実に解決を求められる問題であった。
 パネルディスカッションは、第1部(外国人及び民族的少数者の現状と課題)、第2部(多民族・多文化共生社会への展望)の2部構成で行われ、第1部は、近藤敦教授、辛淑玉氏、田中宏教授、二宮正人ブラジル弁護士、松尾良一浜松市国際課長、渡辺英俊NGO代表、第2部は、佐藤信行RAIK通信編集長、千葉景子参議院議員(民主党)、遠山清彦参議院議員(公明党)、山崎公士教授、関聡介弁護士が、各立場からの主張を行った(多岐に渡るので、詳しくは日弁連報告等を参照されたい)。
 なお、シンポ資料は、本編520p、資料編369pあり、内容も充実しているので、是非ご覧になることをお勧めする。



第2分科会
『リゾート法の検証と新たな展望−環境保護と持続可能な地域振興−』

会 員  原 田 彰 好

 2004年10月7日宮崎シーガイアにおけるシンポジウムは、リゾート法(「総合保養地整備法」)の廃止と自然や地域の生態系、伝統文化を生かしたツーリズムを柱とする地域振興を訴えるものであった。
 シーガイアはリゾート法指定第1号の「宮崎・日南海岸リゾート構想」の中核施設であるが、乱開発の最たるもので、江戸時代から守り育てられてきた海岸の潮害防備保安林を開発して、45階建ホテル、国際会議場、ゴルフ場などを総額3300億円、関連公共事業も含めると4617億円を投入して建設したが、開業後毎年200億円の赤字を計上して倒産し、出資者である宮崎県にも多大の損失を負わせたところであり、このシーガイアで本シンポジウムが開催されたことは誠に皮肉と言わざるを得ない。
 日弁連では既に稀代の悪法ともいえるリゾート法の廃止を求める決議を採択しており、リゾート法をめぐる議論は新しいものではないが、リゾート法に代わるものとして地域内発型の持続可能な地域振興を提唱し、国内外の多くの地を訪問してその実例を広く紹介したことが新鮮であった。
 紹介された実例に共通しているのは、地域の自然と伝統文化を守りながら、住民が主体となって地域外からの旅行者を導入するというものであり、今後はこの方式による地域振興が広がることが予想されるが、そのための政府・自治体の支援が不可欠であろう。



第3分科会
『21世紀、日本に死刑は必要か―死刑執行停止法の制定と死刑制度の未来をめぐって』

シンポ実行委員会 委員 村 田 武 茂

 本シンポは、本年5月から9月まで、全国9カ所で開催された死刑問題に関する連続シンポの集大成というべきものである。そこでの報告の一つとして、当会の村上会員が行った「死刑と無期の量刑基準」に関する報告があった。この報告により、死刑と無期との間に量刑事情における質的な差はなく、明らかに量刑誤判と言うべき死刑判決が存在することが明らかになった。また、龍谷大学の石塚教授からは、アメリカにおけるイノセント・プロジェクト(誤判再チェックプロジェクト)の内容と、日本でも同様の作業が必要であることが報告された。続いて、平成14年に名古屋における死刑シンポに参加していただいた韓国死刑廃止運動協議会会長の李相赫弁護士から、韓国では年内には、死刑廃止法が上程される見込みであることが明らかにされた。
 パネルディスカッションでは、EUの駐日本副代表であるミヒャエル・ライテラー氏(EU加盟国は、全て死刑を廃止しており、本年は、この加盟条件を満たすため、トルコが死刑を廃止した)、ジェームズ・コールマン氏(ABAーアメリカ法曹協会ーの死刑執行モラトリアム実行責任者)、車亨根氏(韓国死刑廃止運動協議会事務局長)、胡慶山氏(中華民国淡紅大学日本研究所専任助教授)、亀井静香衆議院議員(死刑廃止議員連盟会長)、柳重雄(シンポ実行委員会副委員長)がパネリストとなり、シンポ実行委員会副委員長である安田好弘の司会により、様々な角度から議論が展開された。