平成16年9月21日、名古屋弁護士会で実施された「架空請求110番」には、78件の相談が寄せられた。
いまだに架空請求に怯える被害者は後を絶たない。
ただ、意外にも支払ったという相談は6件で、ほとんどが、見えない脅迫に怯えながらも支払を拒絶し、無視をしようと努力しつつ、本当に大丈夫か取立に来ることは無いかどうかを専門家に確認したくて電話をしてきた、ということがうかがえる。
ヤミ金融被害が社会現象として取りざたされ、その対応策をメディアが何度も取り上げているため、ある程度教訓化されつつあり、実害が減ってきているかとも思われる。
被害者の性別を見ると男性がほぼ6割、「子供の被害を相談したい」親からの相談が5件あった。
10代が6名、20代8名、30代24名、40代11名と若者・中高年が被害の対象者だが、相談の6割が有料サイト型なのでこの年齢層というのは納得がいくものである。
はがきによる請求がもっとも多く、次いで携帯電話の電子メール、携帯電話への着信による請求と続く。
架空請求者の名称は、東京債権回収機構(2件)・日本債権管理センター・東都債権回収機構(6件)等、もっともらしい債権回収会社を詐称した請求者が急増している。「法務省認可特殊法人」も現れた。
請求名目の6割は予想どおり有料サイト型(アダルト系・出会い系)で、10代6名すべての相談がこの利用からである。「電子消費者未納利用料」の架空請求といった相談が6件もありもっともらしい請求項目を作り上げたものである。
請求の際に不安を覚えた文言で象徴的なものは「連絡がないと40万円以上を自宅へとりに行く。」(被害者:出会い系有料サイト利用。17歳女性)と携帯電話の着信とメールにも送られてきたという。さぞかし怖かったことだろう。支払い前にこの110番へ連絡してきたので助言がなされたが、周りに相談できる人がいなかったのは本当に残念である。
パソコンと携帯電話の爆発的な普及に伴って、このような有料サイト等の請求は10代を含めて急増していると言えるが、もしかしたらあれのことかな、という後ろめたさが、架空請求の「思うツボ」にはまってしまう。
今回の相談のうち実際に支払ってしまった被害は6件だけで総額657,000円にのぼる。これが全国規模になるといったいいくらの被害額になることだろう。
「個人調査を終了いたしました」「最終通告(これは大手消費者金融のはがきをめくると出てくる)。」「最終期限」「法的措置をとります。」「強制執行いたします。」「差押ブラックリストに載りました。」「和解交渉の意思ある場合ご連絡下さい。」「9月14日訪問回収する。」などと、もっともらしく記載もしくはメッセージが手元に残る。事前に警察へ相談したのは4件、被害届けを提出したのは2件とまだまだ警察を上手に使われていないのが課題と言える。
今後とも、名古屋弁護士会としても、消費者特に若い世代への啓蒙活動を高めていくとともに、被害の実態を警察・電話会社・総務省・金融機関等への情報提供に努めていきたい。