中高生サマースクール    


中高生サマースクール
    ――校長先生は、今年も満足

広報委員会委員長兼サマースクール校長
石原 真二

答えがない!?
    憲法講座を企画担当して

広報委員会スクール部会
部会長 臼井 幹裕

『超気持ちいい!』
    〜刑事模擬裁判を担当して

広報委員会スクール部会
委員 川岸 弘樹

 


中高生サマースクール
 
――校長先生は、今年も満足

広報委員会 委員長兼サマースクール校長 石 原 真 二

1、サマースクールを今年も開講
 当会は、昨年度に引き続いて、今年も7月26日から30日まで、サマースクールを開講した。
 昨年のサマースクール閉校式で、校長は生徒たちの熱いまなざしに応えて「来年もやるよ」と宣言をした。校長はいつも生徒に対して「約束は守らねばならぬ」と言っている。校長が約束を破ったのでは示しがつかないばかりか「先生は嘘つき」と言われてしまう。サマースクールを今年も開校することが校長の使命であった。
 しかし、昨年と同じことをしたのでは能がない。生徒に満足してもらえる充実した企画を練るようスクール部会員を中心とする講師陣に厳命した。各講師は忙しい中、生徒のために知恵をしぼり面白い内容の講座を企画・実施してくれた。
 この紙面を借りて講師陣を始めご協力いただいた各会員に、改めてお礼を申し上げる。

2、法廷傍聴(26、27、28日の各午前中)
 一番人気がある。やはり手錠に腰縄で連行されてくる被告人を目の当たりにすることは、生徒にとり極めて強いインパクトを与える。昨年は1日で50名としたが、夏期休廷期間中で法廷数が限られ、法廷の調整が大変であったので、今回は、3日間各30名宛で行うことにした。

3、専門講座(29日午前・午後)
 専門講座は、「甘いわなにご用心パート・」という消費者講座、「憲法って何だ!」という憲法講座と「法曹と語る」の3本立てである。
 昨年参加の生徒からは、受け身型より参加型の講義の希望が多かったので、生徒と一緒に考えて、議論する企画を立てるよう指示した。また、グループ分けも、中学1・2年生とその他を区別するようにして、同じレベルで議論ができるようにした(昨年は、学年を考慮しないでグループ分けをしたため、議論について行けない生徒を作ってしまった反省からである。)。
 講座の一例を挙げれば、弁護士が悪徳セールスマンに扮し、言葉巧みに生徒を勧誘して契約締結に持ち込むコーナーを設けたりして悪徳商法について勉強をしてもらった。
 今回の目玉は、「法曹と語る」である。昨年「弁護士と身近に話せてよかった。」等の意見が多くあったので、裁判官や検察官と親しく話す機会を作ることができれば、なおよいであろうと考え、地裁・地検にお願いして若手裁判官・検察官を講師として派遣いただいた。生徒から法曹三者に対して活発に質問・意見がだされ、裁判官・検察官も生徒の熱心さと意欲に感激の面持ちであった。

4、刑事模擬裁判(30日)
 青木恭美・川岸弘樹両会員がシナリオを作成した。評議の議論が活発になるように、コーディネーターを1名から2名に増員し、有罪・無罪の立場から生徒の議論をサポートすることにした。6グループとも結果的に無罪評決となったが、シナリオが昨年の経験を踏まえて練り込まれたこともあり、評議は白熱した(※憲法講座と刑事模擬裁判の詳細は、別項をお読みください。)。

5、思わぬ伏兵
 昨年と異なり今年は準備期間も長く万全の体制で臨んだが、台風10号という思わぬ伏兵が現れ大いに振り回された。28日夕方の予報では、30日午後には名古屋は台風の中心に入る予想になっていた。岐阜、三重、静岡から通ってくる生徒も多数あり、台風による混乱を回避するために、28日夜、警報発令状況に応じて模擬裁判を実施するか否かの検討を急遽行い、実施(中止)の基準を決定し、29日、当会ホームページで緊急告知し、また、文書を作成して生徒に交付あるいはファックスするなどして実施基準の告知に努めた。生徒及び講師の熱い思いが台風に届いたのか、台風は北上することなく西に移動し、模擬裁判も予定通り実施でき、全ての講座を無事に終了することができた。

6、今年も大好評
 今年のサマースクールも大好評であった。参加した生徒のアンケートからは、年に1回でなく何回も開校して欲しいとの声も多い。現在、サマースクールは広報委員会が担当しているが、法教育の一層の充実を図る観点からも専門の委員会を立ち上げる時期にきているのではないかと考える。

7、校長の独り言
 何でそんなに馬鹿みたいに真剣になってやれるかって?子どもたちの顔を見てごらん。手抜きなんてできないよ。真剣勝負だよ。まして、こんなファックスをもらったら尚更だよ。来年も頑張らなきゃ!

(受講生から頂いたファックスの文面)

弁護士会のみなさまへ

 今日は、とても貴重な体験をすることができました。
 本当にありがとうございました!
 このサマースクールでは、日頃体験できない多くのことを学び、考え、自分の意見も多く出せました。
 サマースクールに出る前までは『弁護士になろう』という将来の夢も諦めかけていたところでした。しかし、この2日間を通じて、『またがんばろう!』という決心がつきました。
 そして、自分と同じ夢を持つ友達もつくることができました。
 これからもまた、一生懸命に勉強をして、夢を実現できるようにしたいと思います。そして、来年のサマースクールにも出たいと思います。今日は、本当にありがとうございました。



答えがない!?
 憲法講座を企画担当して

広報委員会スクール部会 部会長 臼 井 幹 裕

 憲法講座は、「憲法って何だ」と銘打ち、巷で話題の憲法9条について、改正案を提示し、その是非を議論するというものである。
 各人の考え方によって結論の異なる(1つの答えがない)問題にどのように取り組むかを学んでもらうことが1つの目標である。
 憲法なんて難しそうなものに、中高生は応募してくれるのかの不安もあったが、41名の応募があった。

 対象は、中1から高3である。昨年の反省から、ほぼ2学年ごとに3クラスに分けて実施した。
 準備段階で、中学の教科書等を入手し、生徒らの知識レベルを把握するにつれて、同じテーマであっても学年に応じて内容・形式を工夫することを迫られた(これは、今から思えば当然のことである)。例えば、中1・2対象クラスは、机を国会に模して設営し、生徒に国会議員になってもらい当事者意識を高めるようにした。

 小員は、高2・3クラスを担当し、打合せを重ね、授業の進行シナリオを練り込んだ。しかし、生徒たちが、果たして提示する改正案の賛成派と反対派に分かれてくれるのか、どちらでもないとかわからないというグループはできたりしないか、講師側にも、確たる答えはなかった。

 さて、本番。「憲法改正が話題となっているね。何を改正することで話題になっている?はい、〇〇君」。当てられた生徒は、9条と答えてくれた(よし、いいぞと心の中で呟く)。

 いよいよ、改正案を提示する。小員から改正案を説明して、生徒たちに最初の判断を尋ねる。
 「賛成の人は?」誰も手を挙げない(うっ、まずいと、頭の中が真っ白になる)。
 「反対の人は?」生徒何人かが手を挙げた。
 「では、残りの人はどのような考えですか?」1人の生徒が答える(が、何を言っているか、頭に入ってこない)。
 どうしようかと思っているところへ、生徒何人かが賛成派となってくれた(内心、ほっとする)。

 憲法9条の改正案について、賛成派、反対派、中間派に分かれて、意見をとりまとめてもらい、その後、各派の意見が出された。
 意見を述べあう中で、お互いの意見が実は似通っていることが分かったり、意見を撤回するとか、改正案を修正するという意見が出された。
 最終的な結論は、改正案は否決された。

 講座を終えて
 当日の緊張感は相当なものであったが、今思うと生徒に助けられた感じがする。
 生徒たちからの感想を見ると、いろんな人の意見が聞けた、自分の意見が言えた、憲法のことを考えることができたなど、好意的な反応である。講座の時間が過ぎても講師の弁護士と話し込む生徒もいて、難しい問題に取り組むきっかけ作りには十分なったと思われる。
 議論をする中で、イラクや北朝鮮の話題、自衛隊の派遣のことなどもそれなりによく知っているという感じはあったけれど、今の時代、同世代で、向かい合って議論することなんてないのだろう。弁護士会がそのような議論の場を提供するのは、私にはそれなりに意味があると感じられた。




『超気持ちいい!』〜刑事模擬裁判を担当して

広報委員会スクール部会 委員 川 岸 弘 樹

 今回、私はシナリオライター兼出演者として模擬裁判に参加させて頂いた。元々シナリオまで作成する気はサラサラなかったが、役者として出演したいと発言したことが委員長らの耳に届いてしまい、ならシナリオも作った方がいいでしょ、と押し切られてしまったのである。青木恭美会員をも巻き込んで共同でシナリオ作成に取りかかったが、一から作成するのは予想以上に難儀であった。懐かしのルービックキューブに例えて言うなら、5面までは何とか揃えられたが残り1面を揃えようと思うともう一度全てをいじらざるを得ないといった状況に何度も陥り、都度、部会員の方々から貴重なアドバイスを頂き、何とか完成にこぎつけた。ちなみに今回の話は男女関係のトラブルに端を発した殺人事件であるが、シナリオ作成の過程では、私の思い入れ(思いこみ?)が強すぎるのか、青木会員から、ちょっと妄想が入りすぎとの貴重なご意見を頂戴したりした。
 そして当日は各出演者の個性を生かした迫真の演技のおかげで大変白熱した法廷劇となった。劇を踏まえての評議の際には、参加した中高生はシナリオ中にちりばめておいた重要な事実をほとんど全て指摘してくれ、有罪無罪それぞれの立場から活発な議論が交わされた。そんな中高生の姿に、自分の胸の中に何とも言えない熱くこみ上げてくるものがあった。模擬裁判が終わった後の気分は、某金メダリストの受け売りとの非難をおそれずに言えば、『超気持ちいい!』といったところであろうか。