【特集】どっこい民暴
  全国民暴対策協議会愛知を開催
    −行政対象暴力排除の機運高まる−


民事介入暴力対策特別委員会 副委員長 大 山 泰 生

1 協議会の開催

 平成16年7月2日1時から5時まで、愛知県芸術文化センター大ホールで協議会を開催した。テーマは「行政対象暴力の排除」。全国から公務員約1200名、弁護士約200名、一般市民約500名の合計約1900名の参加があった。

2 下野新聞記者の報告

 下野新聞三浦記者から、栃木県の鹿沼市の職員が産業廃棄物の処分をめぐる職員と業者の癒着について、この癒着を排除しようとした職員が暴力団員に殺された事件の報告があり、この中で殺害された奥さんの生なましい手記が紹介され、このような行政対象暴力に関する最悪の事件を2度と起こさないよう訴えられた。

3 寸劇

 行政対象暴力への対応についての寸劇が上演された。ある右翼団体が公共工事に関して、市の職員に建設業者に対して圧力をかけさせて建設業者から金銭を脅し取るというもの。最初に悪い例として金銭を取られた事例が、その後によい対応例が演じられた。単に抽象的な議論だけでなく対応方法などを視覚的に訴える手法であり、聴衆受けする内容であったと思われる。

4 パネルディスカッション

 最後に、パネルディスカッション(コーディネーター:名古屋・江尻委員)が行われた。福井市役所からは、機関誌の購読などの不当購読要求により年間約2000万円ほど被害が発生していたのを、弁護士の協力も得て、公務員が一致団結して排除した事例が報告された。全国で数多くある被害の排除事例として注目すべき事例である。次に千葉県の行政対象暴力に対する取り組みが紹介され、同県では、平成15年に行政対象暴力対策室を設け、職員からの相談に応じ、また千葉県警、県民会議、弁護士会と協力して対応する4者の協定を結び対応していること等先進的取組が紹介された。さらに北九州市では、昭和62年から全国に先駆けて、民事暴力相談センターを開設し、警察、弁護士会などとも連携して暴力団の排除を行っており、単に職員が暴力団に対する不当要求行為に屈しないということだけでなくさらに進んで、行政自体が警察と一般市民の人と共に暴力団からの要求排除の先頭に立って暴排活動を進めていることの報告があった。
 地元名古屋市からは、最近起こった市会議員の不当な要求にからむ刑事事件をきっかけに職員倫理の保持や公正な職務執行を確保するために監察室が設けられ、名古屋市職員の倫理保持に関する条例の制定がされていること、県民会議の主催する責任者講習などをより活用し、警察、弁護士会と連携をとり対応していることなどの報告がなされた。名古屋市としては、市会議員からの不当な圧力の排除も含め市民の側に立って中立性、公平性のある適正な行政が行われるようさらなる条例の整備、研修体制、組織の整備などを行いたいとの決意が示された。最後に、これら報告について名城大学の昇教授からコメントがなされ、ハード面の組織の体制の確立、ソフト面の要綱の制定、条例の制定などの整備の必要性が解説された。一旦具体的な体制や条例が制定されるとそれらの組織などは継続されるので、行政対象暴力に対する制度として確立される必要性が強調された。すなわち、例えば、行政対象暴力に関する体制が片手間に総務の1部門として設けられるのと、専属の機関を設置するのでは、継続性の点で全く異なることになる。また、単なる内部的な要綱にとどまっていれば、要綱が改訂されればなくなるが、一旦条例などの形式で制定されれば、首長が代わっても継続性が保たれることになるので、このような理想的な形態のハード、ソフト面が整備されれば行政対象暴力に対するより有効な体制が整うとのコメントがなされた。

5 今後の課題

 いずれにしても、この問題自体は、全国的にも緒についたばかりで、これから積極的に推進されるべき問題であること、また、今後考えて行かなければならない問題点が多数あることなどが浮き彫りになった。今回の参加者の大部分は、行政対象暴力に悩まされる公務員の人であり、ほとんど退席することなく、関心の度合いの高さを感じた。また、協議会資料として、職員の対応マニュアルを配布したが、これには、窓口での対応方法や公務員としてのスタンスなど具体的な方法が記載されており、今後の体制作りなどに有用であると自負している。この行政対象暴力の問題は、未だ緒についたばかりであるが、現時点における問題点、対応マニュアル、行政としてあるべき体制作りなど一定の方向性を示すことができたと考えている。しかし、実際の行政対象暴力排除の体制作りこそが重要なことであるという意味では、このような協議会がその啓蒙と起爆剤となればと思っている。