北海道家庭学校に泊まってきました−児童自立支援施設の現場−

子どもの権利特別委員会
委員  安 藤 雅 範

1 北海道家庭学校とは?
 児童自立支援施設(かつての教護院)の原点を実際に体験するため、真冬の2月9日、10日に、北海道紋別郡遠軽町にある北海道家庭学校(以下、家庭学校という)を訪問した。
 その特徴としては、・社会福祉法人が経営していること(現在の児童自立支援施設の大半は、国立、都道府県立又は市立である)、・小舎夫婦制(生徒のいる小規模の寮舎に職員夫婦が家族と共に住み込む)であること、・みんなで汗をかく労働を重視していること、・広さ436ヘクタール(130万坪)で敷地内に畑、牛舎、バター製造舎等があること、・木工教育を重視していることなどが挙げられる。

2 どんなところ?
 男子のみ。定員85名に対し、現在在籍56名。小学校6年生2名、中学生27名、中卒者27名。
 入所経路は、児童相談所が51名、家庭裁判所が5名。北海道内の少年が55名で、道外の少年は1名である。
 寮は定員12名で、現在6寮が稼働している。

3 どんな生活?(若干不正確)
6:30 起床、整列して人数確認
6:35 朝の作業(朝食準備、洗濯、除雪等)
7:30 朝食
8:00 朝礼、ラジオ体操
      (施設内の)教室での授業
16:30 夕作業(除雪)
18:30 夕食
19:00 放送会議(1日の確認、翌日の確認)
21:00 消灯

4 寒い・・・
 マイナス8度でやる朝のラジオ体操は指が痛い(それでも暖房が入っていたらしい)。
 家庭学校は信頼関係・愛情を重視して脱走防止の鍵をかけないし校門には扉がないが、冬場の脱走は文字どおり命がけである。
 夕作業で除雪作業を行った。プラスチック製のそりを使って、黙々と雪を運び続ける。腰が痛くなりそうな作業を2時間も続けたが、高さ1.5メートルもある雪が見る見るうちになくなっていく。成果が目に見えて楽しく、時々走ってまで作業をする少年たちがいた。終わってみると、あれだけあった雪が見事になくなっている。雪が先生なのかもしれない。これが労働による教育なのであろう。

5 熱い・・・
 私が泊まった寮は、寡黙で恐い雰囲気の男性職員と親しみやすい雰囲気の女性職員が担当していた。消灯後、職員夫婦と深夜まで話をしたが、本当は二人とも気さくで温かかった。「私は嫌われ者でよい」「仕事の不快な部分を全て取り除いても快適な仕事にはならない」「彼らは誉められることに慣れていない。下手に誉めると崩れてしまう」「欲しいものがあるとすれば、子どもの心に届く力が欲しい」などと語ってくれた。
 職員との座談会で、弁護士に何か期待することはありますかと尋ねたら、(労基署からか)労働時間の制限を守りきちんと休暇をとるようにとの指導が時々あるが、「私たちはいつも子どもたちと一緒にいたいので、家庭学校についてだけは、こんな制限が及ばないようにして欲しい」との返事が返ってきた。

6 驚き
 特筆すべきは、ぼーっと油断していると笑い者にされかねない雰囲気が教室にはあったのに対して、寮にはそのような雰囲気はなく、自由時間に絵を描いている少年がいるなど落ち着いた雰囲気があったことである。