全国付添人経験交流集会開催される


会 員  高 橋 直 紹

 本年1月24日、25日、南紀白浜にて、第14回全国付添人経験交流集会が開催された。少年事件に携わる奇特な人たち(?)が、遠く南紀白浜に、全国から200名を越す弁護士が集結したことは驚きであった。当会からも15名を超す会員が参加した。
 1日目は全体会と分科会、2日目は分科会とメニューが組まれており、現在の少年事件に関する諸問題につき議論が交わされた(分科会については紙面の関係上割愛する)。
 全体会は、当会子どもの権利特別委員会企画の「児童自立支援施設の現状と課題−愛知学園事件を契機に−」と題したシンポジウムであった。これは、平成14年10月に愛知県の児童自立支援施設「愛知学園」で発生した、少年4名による職員殺害事件(いわゆる愛知学園事件)を題材にしながら、児童自立支援施設の現在の状況を考察するとともに、児童自立支援施設のあるべき姿を考察しようとするものである。
 司会に多田元当会子どもの権利特別委員会委員長、基調講演に同委員でもある服部朗愛知学院大学法学部教授、パネリストとして、愛知学園事件を担当した桐井弘司委員、そして三重県の児童自立支援施設「県立国児学園」の元学園長小野木義男氏という顔ぶれであった。
 少年審判の最終処分先の一つである児童自立支援施設がどのような施設なのか、少年院とどう違うのかということについて、実は余り知られていないのが現状である。そこで、まず、服部委員から、児童自立支援施設についての基礎的知識を中心にした基調講演が行われた。少年院は少年院法に規定され法務省に管轄される施設で、矯正教育を中心とする施設であるのに対し、児童自立支援施設は児童福祉法上に規定される児童福祉施設の一つで、労働厚生省の所管の施設である。児童自立支援施設は、家庭の暮らしに恵まれなかったために自立の危機に陥り、それが原因で問題行動を引き起こしている少年たちに暮らしを与え、その自立を見守るところなのである。しかし、厳罰化という世論などにより、非行問題を巡る「司法」と「福祉」との乖離が明確化し、施設自体の存在意義が問われているのであり、今こそ児童福祉の理念に立ち返った児童自立支援施設のあり方が問われていると語られた。
 続くシンポジウムでは、愛知学園事件の付添人であった桐井委員からは、事件及び付添人活動の概要報告の後、当会子どもの権利特別委員会における児童自立支援施設についての研究報告がなされた。愛知学園事件は、事件を犯した子どもたち個人の問題だけではなく、貧困な我が国の児童福祉行政の中での児童自立支援施設一般の問題を提起しているものであること、人的物的のあらゆる面で児童自立支援施設の理念からは遠い現状にあることなどが報告された。小野木氏は、実際に長年に亘り児童自立支援施設にて子どもたちと関わってきた経験を熱く語られた。そこでは、規律ではなく、あくまでも子どもたちを中心に据えた生活の様子が伝わるものであった。
 現在、問題のある少年は、少年院などで矯正すればいいのであり、児童自立支援施設は不要であるかの如き乱暴な主張が声高に叫ばれている。しかし、本当に子どもたちの健全な育成を願うのであれば、今こそ児童自立支援施設の理念に立ち返った子どもたちとの関わりを大人は求められているのではないかと考えさせられるシンポジウムであった。