輪島への思い−公設事務所赴任にあたり


会 員 平 良 卓 也

 

裁判所輪島支部 金沢からバスで2時間半。能登半島の北端。管内人口8万9千人。管内面積1130平方キロメートル。これが、3月からの私達の持ち場となる金沢地方裁判所輪島支部です(ちなみに名古屋地裁本庁の管内人口は350万人、面積960平方キロメートルで面積は輪島支部の方が広いが人口は30分の1以下)。輪島支部には裁判官は常駐しておらず、週に2回七尾支部から填補でやってくるとのこと。管内には珠洲市に独立簡裁があります。アクセスとしては、平成15年7月に能登空港が開港しましたが、現在の所、1日に羽田2往復しかありません。輪島への唯一の鉄道であった穴水〜輪島を結ぶ能登鉄道は、平成13年3月に廃線となっています。金沢あるいは和倉温泉からバスを使うしかありません。

検察庁輪島支部 私が公設事務所へ行くことを意識したのは、2年程前に公設事務所の設置予定はあるが手を挙げる弁護士がいないという内容の記事を目にしたことがきっかけです。この時に公設事務所への思いが再燃しました。再燃というのも、私は合格後研修所に入る前、弁護士過疎と公的被疑者弁護をテーマにした日弁連の司法シンポに参加する機会があり、この時に将来はそのような活動をしてもいいと漠然とした思いを持ちました。その後、名古屋で修習生生活を送り、弁護士として活動しているうち、その思いを忘れかけてしまっていた頃に新聞記事を目にしたという訳です。南国生まれなので、北国に一度は住んでみたいという単純な発想の下、数ある候補地の中から、弁護士がゼロ地域であったこと、同じ中弁連管内で気持ちの上での近さを感じたことから輪島を希望しました。

事務所前にて(若松恭子弁護士・平良卓也弁護士) 皆さんから、「寒いところで大丈夫?」とよく聞かれますが、沖縄生まれなのに寒さには結構強いので、さほど気にはしていません。ただ、これも本当の寒さを経験していない(金沢の方の言葉を借りれば、冬に海に向かえば息ができないくらい北風がすさまじいらしい)から言えるのかもしれませんが。と、うちの妻(若松恭子)は寒さに弱いことに配慮をしていませんでした。彼女は形の上では私に雇用される弁護士ということになりそうですが、経理等の実権は彼女が握ることになるのでしょう。

 私としては、色々なことにチャレンジしてみたいという些細な動機で応募したのですが、周囲の受け止め方は違うようです。特に地元での取り上げ方は正直驚きです。初めて記者会見で記者の質問に答えることを経験しました。10年以上弁護士が不在とのことですので、期待が大きいのかもしれません。一方でどういう形で迎え入れられるのか楽しみでもあります。
 余り肩肘張らずに自然に行こうと考えていましたが、皆さんから励ましの言葉を頂くと気が引き締まる思いがします。4年間名古屋で培ったものを発揮してきたいと思います。それでは行って参ります。