裁判官制度改革−第2弾  あなたの情報が、裁判所・裁判を変える! 


裁判官選考検討特別委員会
委員長 青 山   學

1 はじめに
 私たちの弁護士業務は民事、刑事、家事など、ほとんど裁判所の手続によっています。ときには納得のできない判決、訴訟指揮、和解手続について、不審とか不満とか疑問を持ったことがありませんか。あの裁判官の担当で運が悪かった、とか依頼者や弁護士の間で話し合っても裁判所へその声を届けていなかったのではないでしょうか。
 これからは、諦めることはありません。これまでの指名任命手続について、最高裁判所による裁量と密室で行われてきたことの批判から、裁判官の任命手続を透明化、客観化させて国民の意思を反映させようという裁判官制度の改革がすすんでいます。

2 裁判官制度改革ー第2弾
 裁判官制度改革は、その給源の多様、多元化として、弁護士任官、非常勤裁判官制度などがすすめられています。第2弾の改革は、裁判官任命手続の見直しです。その具体化として、裁判官の指名過程の透明化し、国民の意思を反映させる制度として、最高裁判所に裁判官指名諮問委員会を設け、全国の高裁管内の8カ所に地域委員会が設置されました。
 「名古屋地域委員会」には山田万里子会員が弁護士委員として選任され、市民・利用者の立場で活躍されています(山田万里子委員の別稿を参照一読ください)。

3 裁判官選考検討委員会の役割
 この制度は、まさしく外部の目で裁判官の適格性を審査しようとするものです。この制度が有効に機能し、本来の目的を達成することができるかどうかは、対象裁判官に対する情報を、いかに多く、かつ客観的な資料を提供できるかにあります。そのためには、第一段階にあるブロックの地域委員会へ協力し、バックアップすることが不可欠で、その組織として全国のブロック・単位会に「裁判官選考検討委員会」を設けることとなったものです。
 しかし、具体的には、どのような情報をどようにして収集するかであり、情報提供者は匿名ではなく顕名とすること、情報とその資料内容の守秘をどうするか、また提供された情報の保管をどのようにするのか、など解決しなければならない問題が多くあります。

4 当委員会の立上げと情報収集活動
 名古屋弁護士会の当委員会は、委員の選任と理事会、常議員会、日弁連の手続を経て正式発足が10月7日となり、私が委員長に、齋藤勉、岩崎光記両副委員長として、スタートしました。
 これまでに日弁連の担当者会議に出席するなどして下準備をしてきたものの、すでに中央委員会、地域委員会が開催されていて、名古屋地域委員会から9月18日には、「裁判官指名候補者」の名簿と情報受付の周知依頼がされ、10月20日締切という状況のため、集中的に候補者名簿に基づく情報収集を開始しました。
 その具体的な方法としては、
@民事・刑事弁護、消費者、子どもの権利、司法改革運動など関連委員会の周知
Aホームページの会員室への要請
B常議員会への報告と要請
C再任同期(26、36、46)への協力要請
を中心に、各委員が評価アンケート収集と個別の事情聴取することにしました。
 なお、中弁連のブロックとしては、10月3日の中弁連大会の際、委員会の立ち上げをしましたが、単位会への要請のみで、中弁連全体としての具体的な取組をすることができませんでした。

5 今回の情報収集結果と反省
 このように当委員会を中心に情報の収集につとめたところ、裁判官評価アンケートなどの情報提供は79通(名古屋45通、岐阜18通、三重2通、富山1通、金沢13通)ありました。
 このアンケートによれば、5段階評価を中心であるためか、特記すべき具体的事例についての記載は全体の3割に満たず、個別調査も十分できなかったり、段階的評価についても、極端な評価も見受けられ、その客観性について問題あるものもありました。
 今回の裁判官指名候補者に対する情報収集は、実質1ヶ月とあまりにも短期間であっただけでなく、裁判官の任命手続を見直しの制度改革がされていることすら知らない会員がほとんどで、十分な周知と情報提供を受けることができなかったのが実情です。

6 今後の対策−裁判所を変えよう!
 この制度が実を上げるためには当委員会の役割が重大であり、今後は、来年度にも予定される再任、新任裁判官候補者だけでなく、扶助・国選事件・消費者・DV・公害環境など専門分野の担当者からの継続的な情報収集のほか、新たにモニター制度の創設、目安箱の設置などにより、恒常的に裁判官についてウォッチングしていく必要があります。各種事件を担当して、一番身近で、直接裁判官に接する弁護士の情報は欠かせないことから、一層の情報提供の協力をお願いします。
 将来、裁判所は、第○部○係ではなく、裁判官の氏名と顔の見える裁判所となり、どの裁判官によって審理されたのか、どの裁判官による判決なのか、が話題となり、裁判所が透明で身近な存在に改革されていくことを期待したいものです。