第3分科会シンポジウム「クローン人間作っていいの?」―先端医療技術と人間の尊厳


第3分科会シンポジウム実行委員 増 田 聖 子

 2002年、体外受精で生まれた児は約1万2000人、全出生児の1%を超えた。体外受精のために作られ保存された凍結受精卵の処分が離婚に当たって問題になったり、夫の死後、妻が凍結受精卵で妊娠し出産した児の認知訴訟が継続中である。排卵誘発剤など不妊治療に伴うトラブルは続発している。
 体外受精で作成され、その夫婦にとっては不要になった受精卵(胚)を、別の不妊夫婦に提供してもいいのか、その受精卵を用いて、妻以外の女性に出産を依頼していいのか、その胚を壊して研究の対象にしたり、治療に役立つES細胞を作り出していいのか。現在、我が国には、これらを規制する法はない。
 先端医療技術は急速に進歩し、人の生命の誕生そのものまで操作できるようになった。難病を克服し、不妊夫婦に子を授け、我々に多大な恩恵をもたらした。しかし、可能な技術があり、それを望む人がいるのなら、全ての技術が許容されるのか。許容する条件は何か、どこからをどのように規制するのか。
 本シンポジウムでは、法学者、先端医療研究者、報道関係者等を招いてこれらを真摯に議論した。まずは、先端医療技術の対象となる人の人権が守られなくてはならない。同時に、先端医療技術は、我々の子孫、ひいては人類の有り様すら左右する。社会的合意の形成を急ぎ、患者・被験者の人権そして我々と我々の子孫の人権の擁護(それが人間の尊厳だろうか)のための法整備が不可欠である。