1 平成15年7月19日より、27日まで、日弁連民暴委員会視察団として、当委員会の加島光委員とともにニューヨーク市及びワシントンD.Cを訪問した。
メンバーは、東京、大阪、名古屋、岩手からの計12名の弁護士と、安富潔慶応大学教授、川崎友巳同志社大学助教授の2名の学者の計14名であった。
テーマは組織犯罪対策と、企業のコンプライアンスであった。
訪問先は、ニューヨーク市警、ニューヨーク市最高裁判所、マンハッタン区地方検察事務所、法律事務所CoudertBrothers、(以下、ワシントンDC) 司法省、法律家協会(ABA)、量刑委員会、金融会社(Fanni Mae)、連邦最高裁判所などであった。
2 日本では、企業と総会屋など結びつきなどが以前から問題とされていたが、最近では、企業のコンプライアンス(法令遵守)欠如により雪印食品など企業自体が崩壊する例などもあり、企業のコンプライアンスがより重要視されている。
3 米国では、過去に生じた企業スキャンダルを教訓に、2002年にSarbans−Oxley法が成立し、情報公開・弁護士の外部監査委員会への通知義務・内部告発者の保護などを定め、企業の不正防止に成果を上げているそうである。
また、コンプライアンスプログラムが、重要視されている。これは、抽象的な倫理憲章とは異なり、企業内の各セクション毎に、法令違反しやすい行為を具体的に類型化してまとめ、末端の従業員を含め職務遂行上の法令違反を防止するものである。このコンプライアンスプログラムは、企業処罰において重要な意味を持ち、有効なプログラムが存在していれば、それだけで企業の処罰が大幅に軽くなることもあるそうである。
組織犯罪そのものの対策としては、マフィアが全米の各職能の労働組合を牛耳っていたので、司法取引を駆使して組織のトップを摘発して労働組合を正常化させ、マフィアを弱体化させていった例や、捜査側がアンダーカバー捜査としてゴミ処理場を経営し、マフィアを摘発した例などが紹介された。
4 尚、ニューヨーク市は、凶悪犯罪を含め、犯罪が10年前以前に比較し、激減している。
その原因は、地下鉄の落書きなど軽微な違反・犯罪を徹底的に取り締まったことにあるそうである。私は、25年程前に、ニューヨーク市に滞在したことがあるが、その頃に比べて、街がとてもきれいになり女性が一人歩きするなど安全になったと感じた。
5 今回の訪米は短期間で、ハードスケジュールであったが充実したものであった。
以上ですが、訪米の内容は、とてもこの紙面で紹介しきれるものではありません。今回の訪米における質疑の詳細をA4版で計63頁にまとめました。興味のある方はこちら(民暴視察団訪米レポート)をご覧下さい(PDFファイルですので、ご覧いただくにはアドビ・リーダー等が必要です。)。