子供が学ぶ法の精神


子どもが学ぶ法の精神
 ―新しい法教育への挑戦―

中弁連シンポ実行委員会委員長 川 上 明 彦

第1 「法教育」って何?ー目新しい!ー
 平成15年度の中弁連シンポのテーマは、標記のとおりである。ところで「法教育」って何?つい最近まで目新しい言葉である。
 「法教育」の言葉自体は、アメリカにおける考え方の訳語(Law−Related Education)である。平成14年に関弁連大会で「子どものための法教育」に関する宣言を出し、日弁連でも同じく法教育に力を入れ始めている。しかし、まだまだ、わが国では内容を模索中という印象である。
 もっとも「法教育」は、法律自体の知識の教育(法学教育)ではないことは確かであり、法の考え方を重んじる教育を通して将来のあるべき市民像を描こうとしている。子どもたちには、社会には多くの正解のない問題があることを知り、また、困難な問題をきちんと考えて解決する力をつけてほしいものである。
 「法教育」の中身として、どのようなものを盛り込むのか。まさに「法教育」は創成期・発展途上にあるといえる。

第2 名古屋弁護士会などで既に実践中!
 名古屋弁護士会では、関弁連や日弁連の目指そうとしている「法教育」を既に実践している。平成5年から西三河支部管内において「中学校の弁護士社会科一日教室」が実施され、平成11年から名古屋市教育委員会・名古屋市小中学校校長会の協力を得て、全国に先駆け、いくつもの中学校で複数の弁護士がチームになって授業を行っている。福井弁護士会でも実践は始まっている。

第3 「法」とは何かを考える
 
法とは何か。考えてみると実に難しい。本来、法哲学の世界であろうが、ここでは、子どもに学んでほしい法とは何かである。今回のシンポでは、A―4が1枚裏表の「宣言案」に集約されている。
 法と道徳との違いは何か。法も道徳も人が人を大切にする精神、人が一生懸命生きようとしていることを応援しようとする精神は同じであろう。しかし、道徳は、他人に対する関係で、行うべきこと、行ってはならないことを強調する。ところが、法は、拘束力という難しい言葉を外して考えてみると、自分も他人も大切にしていることを強調している。人は、自分の存在に自信が持ててこそ、他人を大切にすることができる。
 今の時代にこそ子どもたちのための法教育が必要であると心から思う。

第4 中弁連から全国へ発信を!
―新型の中弁連シンポ―

 中弁連のシンポは、「実践」を特徴とする全国への発信である。机上の議論を楽しむのではなく、教育関係者をはじめ多くの人たちが一緒になって、目で見て、子どもたちのために、その実践を考え、今後の教育に活かそうというものである。また、今回の中弁連シンポには、多数の教育関係者の参加が予想され、生徒180名以上も参加する。中弁連シンポとしては前代未聞の試みである。また、宣言案の体裁も「試み」である。どうぞご覧になって下さい。

第5 ひとことーなぜ弁護士が法教育か!?
 ところで、ある人が教育関係者に「なぜ、弁護士さんが、一銭にもならない法教育を子どもたちのために頑張っているの?」と尋ねられたとのこと。私なら答えたい。子どもたち、小さい人たちが大きくなって輝いてほしいから。素敵に生きてほしいから。どうぞ、今回の中弁連シンポを楽しみご覧下さい。