第4回犯罪被害者支援全国経験交流集会


犯罪被害者支援特別委員会委員 
吹 野 憲 征

 7月11日(金)、第4回犯罪被害者支援全国経験交流集会が、名古屋弁護士会館5階ホールで開催された。
 集会の内容は、多岐に渡るものであったが、以下、参加して特に印象的であった内容を中心にご紹介する。

1 和歌山カレー事件の報告
 いわゆる和歌山カレー事件の被害者支援活動について、和歌山の山西陽裕弁護士から報告が行われた。
 支援活動の柱は、[1]被害者・遺族の刑事司法手続参加への支援、[2]被害者・遺族の被害回復、[3]マスコミ対策、の3つである。
 本件の最大の特徴は、被告人が刑事裁判の中で無罪を主張するとともに、一貫して黙秘している点である。それ故、刑事裁判の傍聴や被告人に対する民事訴訟の提起によっても、事実関係がどのようなものであったのか、被告人の心情はどうであったのか、という点の情報を得ることの難しさが、支援活動の問題点として浮き彫りになっていた。

2 殺人事件の謝罪交渉
 −あっせん・仲裁の活用例−
 特別報告「一つの区切りを迎えて」
1、あっせん・仲裁の活用例については、当会の雑賀正浩弁護士が経験した事例(2例)における支援活動の報告が行われた。
 2例ともに、被害者遺族の要望は、[1]被害者本人のために、考え得る手段は全て尽くしたい、[2]たとえ、加害者に支払能力はなくとも、損害賠償請求権の証があることを残しておきたい、[3]相手方ないしその家族から、きちんとした謝罪を受けたい、という3点において、共通するものであった。
 2例とも、[1]・[2]の要望に応えるべく、加害者本人に対する損害賠償請求訴訟が提起され、判決は確定しているが、さらに謝罪を求める遺族の心情を考慮して、あっせん・仲裁の申立も行われた。
 申立の趣旨は、加害者本人に対する損害賠償請求及び加害者の親族も相手方に加えて、申立人ら被害者の心情に配慮した適切な対応を行う形での解決を求める、というものである。加害者の親族も相手方に加えた申立の趣旨第2項は、裁判手続よりも柔軟性を持つあっせん・仲裁手続の特徴を活かそうというものである。
 実際の手続運営では、期日間において、あっせん・仲裁人が相手方に対し、遺族の心情やあっせん・仲裁の趣旨を説明し、加害者の親族に出頭を求める等の働きかけが行われていた。こうした期日外での働きかけは、裁判手続にはない柔軟性と言えよう。
 質疑では、法律上損害賠償義務のない親族をもあっせん・仲裁の相手方に加えることの危険性について、疑問が出された。報告事例では、無限定に親族が相手方とされた訳ではなく、事件に至る経緯について知り得る関係にあったと思われる親族が相手方とされていたのであるが、加害者の親族を一方的に追い詰める場にならないような運営上の工夫は、必要と思われた。
2、特別報告「一つの区切りを迎えて」は、大分一家6人殺傷事件について、7月7日に即決和解が成立したことを受け、急遽大分の三井嘉雄弁護士から報告が行われた。
 和解内容の柱は、[1]加害者少年の反省状況を少年が満35歳に達するまで被害者側に通知すること(加害者両親だけでなく、少年の付添人もその責務を負い、大分県弁護士会犯罪被害者支援センターが、被害者側と加害者側の調整を果たす点が特徴的である)、[2]総額2億4000万円の損害賠償を毎月6万円ずつ分割して支払うこと、の2点である。
 [1]については、加害者の精神鑑定・審判を経てもなお、本件の動機が明らかにはならず、被害者側は、将来について大きな不安を抱いていることから、長期間に渡る情報開示を盛り込んだものである。
 [2]については、完済まで330年以上を要するものであるが、被害者側としては、加害者本人に自己の行為の重大性を認識して欲しい、一生をかけて償って欲しいとの意図がこめられている。
 本件のような重大な結果を生じた原因が解明されていない結果、加害者本人が本件をどのように受け止めているかが伝わってこないことに対する、被害者側のやり切れなさと加害者の将来の社会復帰に対する不安の大きさが切実に伝わってくる報告であった。

3 改正された刑事手続の具体的な報告等
 犯罪被害者保護関連2法が、平成12年に施行となったが、各手続の実施状況について当会の村田武茂弁護士から報告が行われた。
 主なものとして、証人尋問の際の証人への付添・証人の遮蔽措置、被害者の意見陳述、公判記録の閲覧謄写、民事上の争いの刑事訴訟上の和解等が挙げられていた。証人尋問時の証人の遮蔽措置については、証人が弁護人席から遠いことも加わって、証人の表情が見にくく、尋問が進めにくいとの指摘が特に印象に残った。

4 犯罪被害者支援の具体的な経験談
 犯罪被害者支援組織に対する、弁護士会としての具体的な支援内容について、静岡の白井孝一弁護士から、報告が行われた。
 犯罪被害者支援においては、ボランティアの方々が犯罪被害者と接する場面は多く、ボランティアの養成が重要な意味を持つ。報告では、ボランティア養成講座の内容及び終了試験の内容も紹介され、示唆に富むものであった。
 また、犯罪被害者等早期援助団体(犯罪被害者等給付金支給法23条)の指定団体となるためには、法人組織として確立し、公安委員会規則所定の人員の確保が必要となるため、支援組織の財政の確立が重要課題として、挙げられていた。

5 東弁の法律相談の状況及び事例報告
 東京における犯罪被害者法律相談の状況と具体的事例について、東京の山田齊弁護士・白川千秋弁護士から報告が行われた。
 相談において、特に増加している罪種は、性犯罪およびストーカーである。殊に性犯罪被害については、加害者が知人であるケースが多く、密室での事件であるため、警察に相談しても取り合われることがなく、相談されるものが多い。
 この点に関連して、強姦致傷の相談例が報告された。加害者が知人であり、しかも合意による性交渉を主張しているケースで、相談者は、加害者とともに飲酒した後(職場関係の飲み会)泥酔状態に陥り、被害を受けたというものである。
 相談者は、PTSDの症状を発症していたが、当初相談に対応した弁護士は、男性と夜遅くまで飲酒することが悪いなどと、被害者の「落ち度」を批判したため、症状は急激に悪化していた。法律相談による二次被害である。
 こうしたケースでは、第三者の証言がないため、刑事責任の追及は困難な面があるが、相談者も刑事告訴を望まない例が大半であること、民事上の責任追及においては、性交渉の合意があれば、PTSDは発症せず、他にPTSDになるような原因がないことを主張することで、加害者の主張を否定することは可能であること、が報告された。本件のような二次被害を与える発言は論外であるが、事件の見通しの説明には注意が必要である。