中部経済新聞2015年08月掲載
訪問販売のトラブル禁止

少し前の話だけど、名古屋でさおだけ屋が逮捕されたってニュースがあったよね。

訪問販売でさおだけ等を販売した際、記載に不備がある書面を交付したとして、特定商取引に関する法律(特定商取引法)違反で逮捕された事件ですね。

うちも訪問販売ではないけれど、営業でお客様のお宅を訪問することがあるので気になってね。

それでは、今日は、訪問販売についてご説明しましょう。訪問販売は、消費者トラブルが生じやすい取引類型であり、消費者を保護するためのルールを定めた特定商取引法により規制されています。

消費者を保護するためのルールか。どんなルールが定められているの?

まず、行政規制といって、不当な勧誘行為等を禁止したり、必要事項を記載した書面の交付等を義務づけたりといった、事業者が守らなければならないルールが定められています。これに違反すると、主務大臣による指示や業務停止命令といった行政処分、刑事罰の対象になります。冒頭のさおだけ屋も行政規制に違反したとして刑事罰の対象になったというわけです。
ほかにもクーリングオフや、事業者による損害賠償請求の制限など、消費者トラブルを防止し、被害を救済するための民事上のルールも定められています。

訪問販売で事業者が守らなければならないルールは、具体的にはどういったものがあるのかな。

訪問販売に関しては、特定商取引法は、@氏名等の明示、A拒否者に対する勧誘の禁止、B書面の交付、C重要事項に関する不実告知、事実の不告知等の不当行為の禁止を定めています。

さおだけ屋は、書面の交付というルールを守らなかったんだっけ。いつ、どういった書面を交付すればいいのかな。

事業者は、契約の申込みを受けた際と契約を締結した際に、別表の内容を記載した書面を交付しなくてはいけません。これに加えて、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上の大きさの文字で記載する必要があります。

ずいぶんと書くべきことが多いんだね。

また、これらの事項については、購入者等が内容を理解できるように、できるだけ詳細に記載する必要があります。例えば、別表の「B代金の支払時期及び方法」については、持参、集金、振込、現金、クレジット等の別を記載し、分割払の場合には、各回ごとの受領金額、受領回数等を記載する必要があります。クーリングオフに関する事項については、赤枠の中に赤字で記載する必要もありますね。

それで、必要なことが書いてなかったら、刑事罰が待っているということか。

書面の不交付、虚偽記載、不備記載等に対しては、100万円以下の罰金が科されます。また、主務大臣による指示、業務停止の対象にもなります。消費者庁のホームページではどのような違反事例があったか公表されていますので、一度ご覧になったら良いと思いますよ。

具体的な事例は参考になるね。

また、クーリングオフ(無条件での申込みの撤回、契約の解除)は、購入者等が、特定商取引法が事業者に交付を義務づけている書面(法定書面)を受領した日から起算して8日を経過するまで認められます。クーリングオフができる旨が記載されてないなど、記載内容に不備があるような書面は、法定書面とは認められませんので、法定書面を交付しなかった場合と同様に、クーリングオフの起算日が進行しないことになります。

いつまでもクーリングオフができるということになるのか。

高齢化が進んだ昨今、特に、判断力が十分ではない高齢者が、悪質な訪問販売業者等によって不当な損害を受けることが問題になっています。消費者被害を防止し、取引の公正化を図るために、特定商取引法は重要な役割を果たしています。

厳しく思えても、必要な規制だってことか。訪問販売ではないけれど、うちも今一度、不当な営業をしていないか、確認してみるよ。

[別表]
@ 商品等の種類 A 販売価格等,B 代金の支払時期及び方法,
C 引渡時期等 D クーリングオフに関する事項
E 事業者の氏名等、住所及び電話番号、法人の代表者の氏名
F 契約の申込み、締結を担当した者の氏名 G 契約の申込み、締結の年月日 
H 商品名及び商標又は製造者名 I 商品の型式 J 商品の数量
K 商品に隠れた瑕疵がある場合の販売業者の責任についての定めの内容
L 契約の解除に関する定めの内容 M 特約の内容