中部経済新聞2011年9月掲載
公正で自由な取引を実現するために独禁法による規制

今日は、独占禁止法(以下、独禁法)について教えてもらえるかな。部下が、独禁法のセミナーに行くって言うから、私も勉強しておかないと恥ずかしいからね。

さすがですね。独禁法は、正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」と言って、文字通り、私的独占や不公正な取引などを禁止して、公正で自由な競争を確保するための法律です。 事業者の公正で自由な競争を実現することによって、事業者の活動を盛んにするだけでなく、消費者の利益を確保することも目指しています。

私たち事業者が健全な競争をすることは、消費者のためでもあるということだね。
その通りです。
次に、具体的に、どのような行為が規制されているのか説明します。別表にまとめておきましたが、この内、中心的な規制である(1)私的独占、(2)不当な取引制限、(3)不公正な取引方法の3つについて説明します。

 難しそうな言葉だなあ。
そうですよね。
まず、(1)私的独占とは、事業者が、単独または共同して、他の事業者の活動を排除したり、支配することによって、一定の取引分野の競争を実質的に制限することをいいます。その手法にはいろいろありますが、たとえば、ある会社が、得意とする分野の事業を独占したいがために、他社がその分野に参入しずらいように、当該事業に不可欠な原材料を入手できないように企てるといったケースです。

確かに、一社やごく少数の会社が市場を独占しては、自由な競争は生まれないねえ。

次に、(2)不当な取引制限とは、いわゆる「カルテル」と「入札談合」のことです。
まず、カルテルとは、事業者が、本来、自主的に決めるべき商品の価格や数量、取引先の獲得等について、他の事業者と共同して取り決めることによって、相互に事業活動を拘束することをいいます。お互いに拘束しあうことで、その取引分野における競争を実質的に制限することになります。
次に、入札談合とは、国や地方公共団体などの公共工事や物品調達に関する入札に際して、事前に、受注事業者や受注金額などを決めることをいいます。カルテルも入札談合も、発覚すると、新聞等で報道されますから、ご存じですよね。

 聞いたことはあるけれど、独禁法に関連するとは知らなかった。
次に、(3)不公正な取引方法に関する規制について説明します。独禁法とそれに基づく公正取引委員会の指定により、不公正な取引方法の概要としては、
  1. 取引拒絶
  2. 差別対価
  3. 不当廉売
  4. 再販売価格拘束
  5. 優越的地位の濫用
  6. 取引条件等の差別的取扱
  7. 不当高価購入
  8. ぎまん的顧客誘引
  9. 不当な利益による顧客誘引
  10. 抱き合わせ販売
  11. 排他条件付取引
  12. 拘束条件付取引
  13. 取引の相手方の役員選任への不当干渉
  14. 競争者に対する取引妨害・内部干渉
があげられます。  
これらは、「公正な競争を阻害するおそれがある」ため、不公正な取引方法として禁止されているのです。

不当廉売って、安売りがだめだってことかい。

そうではなく、正当な理由がないのに不当に安く売り続けることによって、競合する他社の事業が困難になる場合をいいます。たとえば、ライバル会社が仕入値より随分安い価格で物を売り続けたら、消費者は皆、ライバル会社に買いに行ってしまいますから、商売あがったりですよね。


なるほどね。では、ぎまん的顧客誘引とはどういう意味かね。

たとえば、商品について大げさに宣伝したり十分な情報を提供しないことによって、自社の販売する商品が実際のものや他社のものよりも著しく優良であると誤解させることで、顧客を誘引する場合をいいます。いわゆる「マルチ商法」はこれに該当します。
ちなみに、顧客を集めるためとはいえ、行き過ぎた景品や懸賞、広告類は、景品表示法という法律に違反することもあります。
気をつけないといけないね。次に、抱き合わせ販売とはどんな場合なんだい。


「抱き合わせ」、つまり、一つの商品を購入するときに、併せて他の商品も購入させるよう仕向ける場合です。たとえば、人気のあるゲームソフトに人気のないゲームソフトをセットにして(抱き合わせて)購入させるという取引です。マイクロソフト社が表計算ソフトとワープロソフトをセットにした事件は有名です。
なんだか、よくありそうな気がするなあ。

でも、問題があるのですよ。次回は、そのほかの不公正取引と独禁法に違反した場合の効果について説明しますね。