中部経済新聞2011年7月掲載
【ちょっとお得】
節電にともなう労働条件の変更

 【質問】 当社では節電対策のため夏期の休日や労働時間の変更を検討しています。休日や労働時間の変更を実行するにはどのような手続きを取ればよいのでしょうか。

【回答】 まず,@休日の変更について,就業規則に休日の振替に関する定めがある場合は,休日を振替えることで実質的に休日を変更することが可能です。
休日の振替には,就業規則に定めがあるほか,1週間に1日以上または4週間に4日以上の休日を確保すること,遅くとも前日までに本人に通知することが必要です。ただ,月曜日から金曜日まで1日8時間労働する典型的な週休二日制を例にとってみると,同一週内の振替でないと,週の労働時間が48時間となり,週の法定労働時間である40時間を超えた8時間分の割増賃金が発生しますので注意が必要です。そのような定めがない場合は,就業規則の変更が必要です。そして,変更した就業規則に労働者代表の意見書を添付して所轄の労働基準監督署長へ届出ます。この届出を怠ると30万円以下の罰金に処せられます。

次にA労働時間の変更について,始業・終業時刻を繰り上げる場合は,就業規則の変更が必要です。その手続や罰則については前述のとおりです。
また,夏期の労働時間を短縮し,その分を秋期の労働時間に振り替えるなど変形労働時間制を導入する場合には,就業規則の変更のみならず労使協定を締結する必要があります。労使協定も所轄の労働基準監督署長へ届け出ます。この届出を怠ると30万円以下の罰金に処せられます。
変形労働時間制(1ヶ月を超え1年以内の期間を対象期間とするもの)は,対象期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないこと,1日10時間,週52時間を上限として労働時間を振り替えること,対象期間中の連続労働日数は原則として6日までとすることに注意が必要です。対象期間が3ヶ月を超える場合には更に要件が追加されますので弁護士に相談してください。

ただ,育児や介護など家族的責任を有する労働者は,休日や労働時間の変更に対応することが困難な場合もありますので,フレックスタイム制や在宅勤務を利用するなどして十分配慮する必要があります。

いずれにしても,労使間で十分に話しあい双方が納得した上で手続きをすすめることが重要です。
以上