最近、年収の3分の1を超える貸付けが禁止されたという話を聞いたのだけど・・。 |
貸金業法の改正のことですね。今年の6月より、法律が施行され、個人がお金を借り入れる個人向けの貸付けは、原則、年収などの3分の1までに制限されることになりました。このことを、「総量規制」といいます。 |
なぜ、そのような規制がなされたわけ |
過剰な貸付けけがなされると、月々の収入では支払いができなくなります。そのため、返済のために借入れを重ねる多重債務に陥ってしまい、破産申立てをしなければならなくなったり、最悪の場合には、経済的な理由から自殺に追い込まれたりするなど、深刻な社会問題となったからです。 |
多重債務の問題については、ニュースで見たことがあるよ。厳しい取立てがなされていたようだね。 |
そのため、貸金業法の改正で取立行為の規制が強化されています。例えば、夜間に加えて、日中の執拗な取立行為も禁止されています。また、過剰な貸付けがなされないように、貸付けにあたり、トータルの元利負担額などを説明した書面の事前交付を義務付けています。 |
なるほど。そのような改正によって、多重債務の問題に対処しているんだね。 そうそう、総量規制について、さっき、個人がお金を借り入れる場合と言っていたけど、法人向けの貸付けの場合には、規制の対象とならないの? |
そうです。法人の場合や、個人でも保証の場合には、総量規制の対象となりません。 |
では、個人でも事業者の場合はどうなるんだい? |
個人が事業用資金として借り入れる場合は、事業・収支・資金計画を提出し、返済能力があると認められるときには、上限金額に特段の制約なく、借入れが可能です。 |
なるほど。 |
また、個人の場合でも銀行などの住宅ローンや車のローンは、総量規制の対象とはなりません。 |
では、総量規制からすると、収入がない専業主婦や学生の場合には、借入れができなくなるのかい? |
そうです。収入がない者に対しては、貸金業者は、原則として貸してはいけないことになっています。 |
なるほどね。収入がなければ、返済ができないからね。 |
ただ、収入がなくても、例えば、売却可能な資産を持っている者に対しては、貸してもよいことになっています。 |
その場合には、返済の見込みがあるからだね。 |
そうです。 |
例えば、家族などが病気になって、医療費が急に必要となった場合でも、年収の3分の1を超えるという理由で借りられなくなるの? |
そういう場合に備え、緊急の医療費の貸付けなどは、例外的に、年収の3分の1を超えている場合でも、貸金業者は、返済能力があるかを判断した上で、貸付けができるとされています。 |
総量規制には例外もあるんだね。では、貸金業者は、どうやって、借り手の債務の総額や年収を知ることができるわけ? |
借り手の債務の総額については、貸金業者は指定信用情報機関により、調べることができるようになりました。 また、年収については、貸金業者は、自社の借入残高が、50万円を超える貸付けをする場合や、他社を含めた総借入残高が100万円を超える貸付けをする場合には、給与明細書といった年収などを証明する資料を取得しなければ、貸してはならないことになっています。 |
そうすると、大きな額を借りる際には、年収などを証明する資料が必要となるということだね。 |
そうです。同じように、売却が可能な資産があるかについても、資料が必要となります。 |
そのようにして、過剰な貸付を抑止しているんだね。そうなると、年収の3分の1を超えてしまうと、クレジットカードも使えなくなるのかな? |
総量規制は、キャッシングに関するものですので、ショッピングとは別です。そのため、キャッシングができなくなっても、商品をクレジットカードで買うことはできます。ただ、換金目的で商品を買うことは、クレジット契約に違反しますし、万が一、破産手続をとることになった場合には、債務の支払いを免れさせるという裁判所の免責許可決定が不許可となる事由にあたるおそれがあります。 |
それは大変だね。 換金目的で商品を買ってはいけないということだね。今後、総量規制によって、借入れができなくなる人が増えそうだけど、困っている従業員がいたらどうしたらいいのかな? |
そのような場合には、弁護士にお気軽にご相談下さい。 |