中部経済新聞2010年7月掲載
誰もが法律家になれる世の中に
―経済的理由から進学諦める人も―

 現在の日本において法曹(裁判官、検察官、弁護士)になるためには、法科大学院を修了し、司法試験に合格した後に、司法修習という研修を受けなければならない。私も3年間法科大学院で学び1年の修習を経て昨年12月に弁護士となった。

 こうした法曹になる過程でかかる費用は少なくない。法科大学院について言えば国立でも入学金、授業料等3年間で約300万円近くかかる。私立であればもっと高いところもある。さらに、その3年間の生活費も必要となる。法科大学院は基本的に昼に授業があり、予習・復習の量も膨大であるから、働きながら通うのは難しい。そうすると、こうした費用を賄えるだけの資力が無い者は借金をすることとなる。

 私は、幸いにも親の援助を受けることができたが、奨学金を借りていた友人は多かった。中には額が1000万円を超えるという者もいたし、経済的な理由から法科大学院に進学することを諦めた友人もいる。

 それでも私が法科大学院に進学した頃は、「人々のため、社会のため」という熱い志をもち、奨学金を借りてでも法曹を目指そうという者は数多くいた。

 しかし、給与制が廃止されるとなると、修習専念義務を課されアルバイトも出来ない修習生は借金をせざるを得なくなる。おのずと、志をもって法曹になったにもかかわらず借金の返済に追われたり、志をもちながら法曹への途を諦めたりする人が増えるであろう。

 修習時の借金が負担になるのであれば、修習自体無くしてはどうかという意見もあるかもしれない。

 しかし、法曹は「国民の権利を擁護し社会正義を実現する」という責務を担う存在であり、その役割を果たすために国としてしっかりとした研修を受けさせることは必要なことであろう。法曹がその責務を果たしていくことで、それは結局社会全体へと還元されるものでもある。

 私も、修習により実に多くのことを学んだ。そこに含まれるのは仕事のイロハにとどまらない。例えば私の指導弁護士は労働者のために手弁当の活動をしていたが、そうした姿から法曹としての役割や生き方なども学んだ。

 また、修習は弁護士以外の法曹の仕事や考え方に触れる貴重な機会でもあった。そこで学んだ裁判官・検察官の考え方は弁護士となった今でもとても役に立っている。

以上、私の体験を交えて述べたが、多少なりとも問題をご理解いただけたのではないだろうか。これを機にぜひ皆さんにも修習生の給費制について考え、議論していただければと思う。