中部経済新聞2010年3月掲載 
【ちょっと!お得】
取引先とのトラブル 「公正証書」作成で予防を

 【質問】新しい取引先と契約をすることになったのですが,この取引先は,他社との間で,契約の内容をめぐるトラブルを起こしたことがあるそうです。そのようなトラブルは避けたいのですが,どうすればよいでしょうか。

【回答】「そんな契約書は見たことがない。そこに書いてある内容はでたらめだ!」そんなトラブルに巻き込まれたら大変ですよね。
 昨年一一月の記事では,契約書の作成を,本年二月の記事では確定日付の付与をお勧めしました。ただ,契約書の内容そのものの真偽についてトラブルになることも起こりえます。それを未然に防ぐ方法として,契約書を「公正証書」にする方法があります。
「公正証書」とは,公証人が,民法等の法律に従って作成した文書のことをいいます。例えば,遺言公正証書,金銭消費貸借契約に関する公正証書などがあります。
 公正証書は,裁判所に証拠として提出した場合,信用性が極めて高いものとして扱われます。また,金銭の支払を内容とする契約の場合,債務者が支払をしないときには,通常,裁判を起こして判決などを得た上で債務者の財産に対して強制執行をすることになりますが,公正証書(執行認諾文言付き)を作成しておけば,直ちに強制執行手続に移ることができます。
 公正証書を作成するかどうかは,通常,当事者の意思に委ねられていますが,定期借地契約や任意後見契約など,法律で公正証書の作成を求められる契約もあります。
 公正証書は,公証人役場で作成します。公証人に条項の作成を委ねることもできますが,公証人は中立的な立場から定型的な条項を作成するに留まります。契約には色々な背景事情がありますし、各種条項できめ細やかな配慮を必要とする場合も多いでしょう。公正証書を作成する場合は,ぜひ弁護士にご相談下さい。