中部経済新聞2010年2月掲載 
離婚時の財産分与について
最近、ゴルフ仲間との間では、タイガー・ウッズの話で持ちきりなんだ。離婚になると多額のお金を払わなくてはならないと聞いてね。今回は、財産分与について教えてくれないか?そもそも慰謝料とは、どう違うの?
慰謝料とは、離婚によって精神的苦痛を被った者に対してなす金銭的賠償のことをいいます。そのため、慰謝料を請求するためには、精神的苦痛を被ったということが必要となります。
これに対し、財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に際して分与することをいいます。
なるほどね。協力して財産を作ったのだから、離婚の際には清算するということだね。
そうですね。財産分与にはそういった清算的な要素や、離婚によって生活の困窮する者に対する扶養の要素などがあります。
私のところは、私が事業をしていて妻は専業主婦をしているのだが、確か定期預金などは全て私の名義にしてあるんだ。私の名義の財産も財産分与の対象となるわけ?

そうです。たとえ一方の名義であっても、夫婦が協力して形成した財産であれば、実質的には共有財産ですから、財産分与の対象となります。
確かに、その方が公平だね。そのほかには、私の名義で、私が父から相続で取得した別荘があるのだが、これはどうなるの?
婚姻前から有している財産や、婚姻中であっても相続など他方の協力によらないで取得した財産は、特有財産として財産分与の対象とはなりません。
なるほどね。では、家の中にあるどちらのものかよく分からない財産は、どうなるわけ?
そのような夫婦のいずれに属するかが明らかでない財産は、夫婦の共有に属するものと推定されることになります。ですから、自分の所有であると主張する方がそのことを証明しないと、財産分与の対象となります。
なるほどね。そういえば、私の自宅は、住宅ローンが残っていたな。そういう場合は、どうなるわけ?
住宅ローンが残っている不動産も財産分与の対象となります。そのような場合は、不動産の時価がローン残高を上回る場合は、不動産の売却代金からローンを完済した残額を分与することになります。
いや、不動産の時価がだいぶ下がったから、不動産の時価はローン残高を下回っていると思うよ。
そのような場合には、当事者間の協議により、どちらが住宅ローンを引き継ぐかや、不動産の名義をどちらにするかなどを決めることになります。場合によっては、住宅ローンの契約内容を変更することになりますので、金融機関の同意が必要となります。
住宅ローンがある場合は、大変なんだね。何が財産分与の対象となるのかは分かったけど、財産分与の額や割合は、具体的には、どのようにして決まるわけ?
一般的な流れとしましては、分与の対象となる財産を特定し、金銭以外の財産については価額の評価をします。その後、分与の具体的な割合や分与の方法を、当事者双方の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、協議により決めることになります。簡単にいいますと、それぞれの貢献度によって分けるということです。夫婦間の協議によって決まらない場合には、調停や裁判を通して決められます。
うちの場合は、専業主婦だから貢献度といわれてもなぁ。
確かに、専業主婦の場合は夫婦財産形成に関する貢献度の割合を具体的に算定することは難しいかもしれません。ただ、かつては専業主婦の場合は3割から4割とされることが多かったようですが、最近では、特段の事情のない限り、夫婦財産形成に関する貢献度は等しいという2分の1ルールが採られています。
その特段の事情ってどういうものなんだい。

福岡高裁の裁判例では、夫が多額の資産を有するに至ったのは、妻の協力もさることながら、夫の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるなどとして、財産の2分の1を基準とすることは妥当性を欠くとしています。
ということは、私の経営手腕や能力によっては、2分の1が基準になるわけではないということだね。
ただ、そのような特段の事情が認められるケースは極めて例外的です。
そうか。ところで、タイガー・ウッズの場合は、まさに夫の能力に負うところが大きいではないかな?

そうですね。ただ、タイガー・ウッズの場合には、夫婦財産契約が締結されていたと報道されていますよね。
夫婦財産契約ってなんだい?
では、次回は夫婦財産契約について、説明します。