中部経済新聞2010年1月掲載 
未成年者の権利について
新年早々、景気のいい話が全くないよ。プロゴルファーの石川遼君が
18歳で1億8000万円余りも稼いで、賞金王だっていうのに。
うちの息子も18歳なんだけど、稼いでくれないかなあ。
社長、息子さんの稼ぎは息子さんのものですよ。 
息子はまだ成人していないんだけど、息子の財産なの?
その通りです。未成年者であっても、財産を持つことはできます。
例えば、お正月のお年玉は子供がもらうものですから子供の財産です。親であっても手を出すことはできません。
また、未成年者が相続により多額の財産を取得することもあります。
なるほどね。でも、子供はその財産を自由に使っていいのかい?
それは自由ではありません。まず、未成年者が売買契約などの法律行為をする場合には、原則として法定代理人の同意を得なければなりません。未成年者には法律行為を行なうに十分な能力が備わっていないと考えられるからです。ただ、お年玉をもらう場合のように単に権利を得る行為や、他人にお年玉をあげると口約束したもののそれを取り消す場合のように義務を免れる行為については法定代理人の同意は必要ではありません。
法定代理人とは、親のことかい?
そうですね。通常は親(親権者)が法定代理人になりますが、親権者がいない場合には未成年後見人が法定代理人に選任されます。
親の同意が必要ということは、息子がお年玉を使って何か買うときにも、売買だから、いちいち私の同意が必要というわけ?
そうとは限りません。お小遣いのように、親(法定代理人)が自由に使うことを認めた財産であれば、未成年者がそれを使うにあたって親(法定代理人)の同意は必要ありません。お年玉も、社長が息子さんに自由に使うことを認めれば、息子さんは社長の同意を得なくても自由に使うことができます。
また、お小遣いでなくても、目的を定めて処分を許した財産については、未成年者は親(法定代理人)の同意を得なくても、その目的の範囲内で自由に処分することができます。例えば、参考書を買うのなら、これまでに貯めたお年玉を使うことを許すような場合です。
なるほど。じゃあ、親の同意が必要な場合に、子供が親に無断で財産を処分しちゃった場合はどうなるの?
その場合は、親(法定代理人)が未成年者の行なった売買などの法律行為を取り消すことができます。例えば、未成年者が親(法定代理人)の同意を得ないで高価な物を買う契約をしてしまった場合、それを知った親(法定代理人)は契約を取り消すことができます。
親が、まあそのくらいの買い物なら大目に見てやろうと思ったような場合でも、取り消されるわけ?
親(法定代理人)からみて、未成年者にとって不利益でないと判断できるのであれば、取り消す必要はありません。
ところで、最近、成人を20歳ではなく、18歳にしようという動きがあるって聞いたよ。
そのようですね。しかし、現在の法律ではあくまで20歳が成人です。一部、例外もありますが。
20歳前でも大人として扱われる例外があるのかい?思いつかないなあ。
まず一つは、未成年者が婚姻をしたときです。男子は18歳、女子は16歳になると、婚姻をすることができます。婚姻をすると、独立の家庭を営むことになりますから、法律行為をするときに親の同意を必要としては日常生活を円滑に営むことができません。ですから、未成年者であっても婚姻をしたら、成人として扱うことにしたわけです。
未成年者の婚姻は自由なの?
自由ではありません。父母の同意が必要です。父母から見て、まだ婚姻して成人として扱われるには十分成長していないと思われるときには、婚姻そのものに同意しないのではないでしょうか。
他にも例外があるの?
親(法定代理人)が未成年者に営業を許可をした場合、未成年者は、その営業に関しては成年と扱われることになります。
例えば、10代でゴルフのプロテストに合格した子供がプロゴルファーになりたいと言い出したときに、親(親権者)がそれを許可すれば、その子供はプロゴルファーとしての活動においては成年として扱われるということになるわけです。
なるほどね。子供の権利もきちんと法律で定められているんだね。