中部経済新聞2009年10月掲載 【ちょっと!お得】
賃貸物件の契約更新拒絶〜事前の通知と正当事由が必要

 【質問】 かつて会社で使っていた建物を他人に貸しています。契約期間は残り8ヶ月です。再び会社で使いたいので、契約の更新をせずに出て行ってほしいのですが、何か問題はありますか。

【回答】 ご質問のように期間の定めのある借家契約では、期間満了の一年前から6ヶ月前までに更新拒絶の通知をしなければ借家契約を更新したものとみなされます。従って、まず、期間内に更新拒絶の通知を出す必要があります。但し、更新拒絶の通知を行ったときでも借家人が借家の使用を続けているのに異議を述べないでいると借家契約を更新したものとみなされますので注意して下さい。

 次に、更新拒絶の通知さえしておけばよいかというと,そうではありません。家主から契約更新を拒絶するには「正当事由」が必要とされています。

 この「正当事由」があるかどうかは,家主と借家人の建物の使用を必要とする事情,従前の経過,建物の利用状況,建物の現況,立退料の提供などから総合的に判断されます。家主には立ち退いてもらいたいそれ相応の事情があるでしょうが、他方、借家人にも、そこで商売をしていたり生活もしていたりと様々な事情があります。立ち退くとなると、移転先をみつけなければなりませんし、移転のために経費もかかるでしょう。そこで、家主と借家人双方の事情や、立退料などを考慮して、「正当事由」の有無を判断することになっているわけです。ご質問の場合も、会社で使用したいという家主の必要性の他に、借家人の必要性や立退料など諸事情により判断されることになります。

 期間満了により正当事由の有無を問わず契約を終了させたいのであれば,定期借家契約の形式で締結することをおすすめします。定期借家契約の詳細については,次回ご説明します。