破産手続が開始されたとしても売買契約が無効になるわけではありませんので,契約に基づいて買掛金は支払わなければなりません。
ただし,誰に支払うかは注意が必要です。
破産手続申立前など,破産管財人が選任されていない段階では,取引先に支払うことになります。取引先の代理人弁護士に連絡して,支払方法を確認するのが良いでしょう。
なお,破産するからと言って、弁済期が到来していない債権について前倒しで請求されるケースが見受けられますが,弁済期が来るまで支払いを拒絶することができます。
一方,破産手続が開始され,破産管財人が選任された後は,取引先の財産の管理処分権は破産管財人に専属するため,取引先ではなく,破産管財人に対し支払う必要があります。
ところで,その取引先に対し,売掛金を有していたり,お金を貸していた場合など,取引先に対し金銭債権を有している場合は,原則として,その債権で,債務(買掛金)を対当額にて相殺することができます。
なお,取引先に対して有している債権について弁済期が到来していない場合でも,破産手続が開始されると弁済期が到来したとみなされますので,相殺は可能です。但し、相殺することのできる金額には制限がありますので注意が必要です。
相殺は破産手続(配当手続)によらずして債権回収を可能とするものですので,取引先に対して債権がないか,よく確認して下さい。
また,契約内容によっては他の手段がとれる場合もありますので,思いがけない損失を被らないよう,弁護士等に相談して下さい。