今年も株主総会の季節を迎えました。
そこで、今月は株主総会の基本的な事柄についておさらいをしておきましょう。
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社長 |
どうせ株主は身内だけだから、
株主総会なんか開かなくてもいい! |
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弁護士 |
これではいけません。
たとえ株主が身内であっても、きちんと株主総会を開かなければなりません。株主総会は、全ての株式会社において必須の機関であり、少なくとも年一回は株主総会を開催しなければならないことになっています。
株主総会の招集を怠ると、取締役らに百万円以下の過料の制裁が科せられる場合がありますので、注意が必要です。 |
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社長 |
取締役も監査役も、社長である私が決めればいい! |
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弁護士 |
これもいけません。
株主総会では、次に掲げる事項を決議することができます。
- 会社法で定める事項
例:取締役・監査役の選任・解任、定款変更、合併、資本減少、計算書類の承認、剰余金分配など
- 定款で定める事項
- 取締役会非設置会社の場合には、株式会社に関するその他一切の事項
この内、会社法の規定で株主総会の決議を必要とする事項については、たとえ定款で取締役会など株主総会以外の機関で決定することを定めても、そのような定款の定めは無効になります。ですから、いくら社長でも、次の取締役や監査役を、勝手に決めることはできないのです。きちんと、株主総会を開催して、決めてもらう必要があります。 |
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社長 |
株主総会を開くことを
全ての株主に電話連絡して了解してもらって開催した! |
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弁護士 |
これは許される場合があります。
株主総会は、原則として、株主に招集通知を発送する方法で招集します。招集通知は、(1)公開会社の場合と書面投票制度または電子投票制度による場合には、株主総会の日の二週間前までに、(2)株式譲渡制限会社の場合には、株主総会の日の一週間前までに(取締役会非設置会社の場合は定款で短縮可能)、発送しなければなりません。
但し、株主全員の同意がある場合には招集通知の手続きを省略して株主総会を開催することができます。従って、電話連絡でも株主全員が了解して開催されればよいわけです。
なお、株主総会は、原則として取締役が招集しますが、例外的に、一定の要件を満たした株主が招集することができる場合があります。 |
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社長 |
株主総会は、儀式みたいなものだから、株主の質問は無視しておけばいい! |
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弁護士 |
これはいけません。
株主総会では、報告事項の報告と決議事項の決議が行われますが、取締役、監査役、執行役、会計参与は、株主から説明を求められた場合に必要な説明をする義務を負っています。必要な説明をすることなく、強引に決議をしてしまうと、後で、決議の効力を争われることにもなりかねません。
しかし、説明しないことに正当な理由がある場合には説明を拒否することが認められています。例えば、質問された事柄が株主総会の目的事項に関しない場合には、説明を拒否
することができますし、新しく開発した技術内容など企業秘密に属する事項を質問されたときのように説明することにより株主の共同利益を著しく害する場合には、拒否することができます。 |
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社長 |
議事録は必要になったら適当に作ればいい!
株主に議事録を見せる必要はない! |
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弁護士 |
これもいけません。
株主総会では、議事録を作成し、原則として、株主総会の日から十年間は会社の本店に、五年間は支店に、備え置かなければなりません。株主と債権者には、営業時間内ならいつでも議事録の閲覧・謄写を請求することが認められています。議事録の備え置きを怠ったり正当な理由無く閲覧・謄写を拒んだりすると、百万円以下の過料の制裁が科せられる場合がありますので、注意して下さい。 |
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社長 |
決議は常に過半数の賛成で有効だ! |
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弁護士 |
そうとは限りません。
株主総会の決議には、普通決議、特別決議、特殊決議の三種類があります。重要な事項ほど、厳格な決議要件が求められています。 |
株主総会の運営については法律で細かくルールが規定されています。決議の手続きや内容に問題があると、決議が取り消されたり無効になることがありますし、罰則が科せられることもあります。後で困らないよう、専門家に相談するなどして、株主総会を適法に運営するよう心がけてください。