法律事務所の窓辺から

弁護士のモットー 〜人の話をよく聞くことから〜



 弁護士としての私のモットーは次の三つである。

 

1 人の話をよく聞くこと
 相談者と接するときは、まず相手の話をよく聞く。これは人と接するとき一般に言えることであろうが、特に弁護士は心すべきである。相談を受けるとき私はまず相手に話したいことを話してもらい、なるべく自分の発言は控えるようにしている。
 実は弁護士は例えば「離婚」と聞けば、何が問題点で、どのように手続きが進み、最終的にどうなるかは大抵検討がつくものである。しかし、私はあえて先走って説明することはせず、相手が言いたいことをまず聞き、それに合わせて回答なり、説明なりをするようにしている。
 そして、相談者も相手の話を聞く人であってくれると相談はきわめてスムーズに進む。反対に、弁護士の話を全く聞かず自分の言いたいことだけを話す人は、結局得るところ少なく法律事務所を後にすることになりかねない。

 

2 早くやること
 スピードが肝心である。社会は弁護士に対し早い対応を求めている。そもそも弁護士に相談してくる人は何らかの悩みを抱えているのであり、早く悩みから解放されたい、あるいは少なくとも問題を解決する方法を知りたいと思っている。その点でまず、早い対応が求められる。
 また、早い対応はミスをなくす。慎重に検討すればミスがなくなるというのは間違いである。早く対応したときほどうまく行く。時間がたてばたつほど記憶は薄れ、困難な事態は進行し、救済の道を閉ざすことになる。拙速を恐れるなかれ。いずれにしても時機に後れるよりはマシである。

 

3 誠実であること
 人間関係の基本である。弁護士の仕事も人間を相手にするのであるから、やはり誠実さが大事である。
 誠実さが求められる場面は事件処理のすべてである。初めに相談を受けるときから報酬をもらって事件処理を終えるときまで、あらゆる場面で誠実でなければならない。
 特に事件処理がうまく行かなかったときが問題である。そのとき依頼者に対してどういう態度をとるかで、弁護士の誠実さが問われる。基本はやはり言葉を尽くして説明することであろう。そうすれば少なくともこちらの誠意は相手に伝わるだろう。自分の無能さを棚に上げて依頼者のせいにすることは厳に慎むべきである。
 三つとも、簡単なようで難しい。実は私も実行できていない。モットーというより目標である。