不正競争防止法 パート2 〜偽装や虚偽表示に規制




今年は、食品の原産地の偽装など、度々、食品偽装事件が報道された一年でした。中部地区だけでも、飛騨牛や三河一色うなぎなど、いわゆる食のブランド偽装が大いに話題になりました。こうしたブランド偽装を規制する法律の一つが不正競争防止法です。今回は、食品に限らず、広く商品やサービスについての虚偽あるいは紛らわしい「表示」や「形態」に関する規制を説明します。

1、食品に限らず、商品にはそれぞれ有名な原産地や品質といったものがあります。そのため、異なる商品にそうした有名な原産地や品質と同じ表示を付けて販売することにより、顧客に購入を促そうとする業者が現れるわけです。

しかし、こうした行為は、その有名な原産地や品質の持っている顧客吸引力にただ乗りしようとする行為であるとともに、顧客を誤信させる行為です。そこで、不正競争防止法は、商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量について誤解させるような表示をする行為やそのような表示のなされた商品を販売するなどの一定の取引行為を「不正競争」と定めています。何らかのサービス(役務)を提供する場合のサービスの質や内容、用途、数量についても同様に定められています。

2、次に、商品そのものの原産地などの表示ではなく、商品の製造元や販売元などに関する表示についても不正競争が定められています。 

ある有名な会社の売り出しているブランド商品と同種の商品に、その有名な会社の名前(ブランド名)にとてもよく似た紛らわしいネーミングが表示されて売り出され、顧客が本当にその会社の売り出しているブランド品であると誤解して購入してしまう、というケースです。こうした行為も、他者のブランド・イメージの持っている顧客吸引力にただ乗りし、顧客を誤信させかねない行為であるとともに、他者が長年の営業努力により獲得してきたブランド・イメージや信用を希薄化する行為です。

そこで、不正競争防止法は、こうした行為を、一定の要件のもとで「不正競争」(「混同惹起行為」あるいは「著名表示冒用行為」)と定めています。不正競争になりうる表示には、業務に係る氏名や商号、商標のほかに、商品の容器や包装など、商品や営業を表示するものも含まれます。

3、他者のブランド・イメージにただ乗りしようとする行為は、商品の形態そのものを模倣する行為にもみられます。例えば、ヒット商品が欲しくて、インターネットのオークションサイトを通してそれらしき商品を購入したところ、よく見ると、模造品(デッドコピー)だった、というケースです。

不正競争防止法は、こうした形態を模倣した商品を販売するなどの一定の取引行為も「不正競争」と定めています。

4、また、最近は、インターネットを通じた取引が盛んであることから、インターネット上のドメイン名は、インターネットビジネスを行う上で非常に重要な価値を持つようになってきました。そのため、インターネット上でブランド力のある他社になりすまして稼ごうとして、他社の商号と非常に似ているドメイン名を取得してこれを使用する行為も出現しています。そこで、不正競争防止法は、他者の商号や商標などと同一または類似のドメイン名を取得したり、保有したり、使用する行為についても、「不正競争」と定めています。

5、「不正競争」が行われた場合、それにより、もともとブランド力を有していた会社は、簡単に顧客を奪われてしまいます。そこで、不正競争防止法は、不正競争により営業上の利益を侵害されたり侵害のおそれがある者に、侵害の停止や予防を請求する権利(差止請求権)を認めています。また、不正競争により営業上の利益が侵害された場合には損害賠償請求も認められており、不正競争防止法では損害額の推定規定を設けるなど請求する側への配慮がなされています。

ところで、これまでお話ししてきた不正競争は、取引上の問題であり、犯罪行為ではないという印象があるかもしれませんが、一定の不正競争に対しては、罰則も規定されています。実際に、食品偽装事件の中には、不正競争防止法違反の容疑で捜査がなされ、有罪判決が下された例もあります。

6、最近、安易に他人のブランド力にただ乗りしようとする商売が目立っています。いつの間にか、自社の商品にそっくりな商品がインターネット上で販売されているかもしれません。そのような場合には、不正競争防止法による対応を思い出して下さい。

但し、不正競争防止法は、「不正競争」の定義や適用除外行為を細かく定めていますので、実際に「不正競争」に該当するか否かについては、専門家に相談するなどして慎重に判断して下さい。