法律事務所の窓辺から

選択型実務修習




弁護士になって八年半、独立開業して四年になる。もう駆け出しではもちろんないし、そろそろ若手と名乗るのも憚られる時期にはなっているものの、後進を指導するなんてとてもとても・・・と思っていたら、今年の夏の二週間、司法修習生(修習生)が事務所にやって来ることになった。「選択型実務修習」という修習プログラムの指導担当を仰せつかったのである。

法曹人口の大幅増員を含む今般の司法制度改革によって、未来の法律家を育てる法曹養成制度にも大きな変更が加えられた。法律家としての実際の仕事に就くためには司法試験に合格しただけでは不十分で、合格後に司法修習生として研修(修習)を受けなければならないという大枠はそのままだが、修習期間は、長らく二年とされていたものが、司法試験の合格者増に伴って一年半、一年四か月と短縮の一途をたどり、新設された法科大学院の出身者については一年にまで短縮された。ひどく短くなった修習期間の中で、カリキュラムの幅を拡げ、各修習生の関心、進路志望に応じた多様な科目を提供しようということで今年から始まったのが、「選択型実務修習」である。八月から九月にかけて、一個につき一〜三週間で完結する修習プログラムが三十個近く設定され、修習生は希望に応じてそれらの中からそれぞれ二〜三個のプログラムを選択する。修習生の引受先は様々で、裁判所や検察庁はもちろん、民間企業や地方自治体もある。弁護士会では、少年事件、医療過誤、知的財産権、労働事件、民事介入暴力、消費者問題、犯罪被害者支援などの特徴のある分野に取り組んでいる弁護士の事務所が引受先として用意された。

さて、わずか二週間ではあるが、修習生を事務所に受け入れ、また、どこへ行くにも修習生を連れて歩くという初めての経験は、どのようなものだったか。

まず、自分の弁護士経験をいくらか肯定的に顧みるよすがとなった。弁護士の仕事同じ事件は一つもないので、何年経験を積んでも多かれ少なかれ毎回悩む、いまだにその繰り返しである。職業人としての自分の進歩や成長を実感しにくい。それでも修習生と比べたら自分も随分成長したものだと思えて、ちょっぴりうれしかった。

また、これから実務に就こうという初々しい修習生と日々接することで、法律家を志した初心を思い出させてもらうことも多かった。

十年前に自分を修習生として受け入れてくれた弁護士に少しは恩返しができただろうか。