言わせてチョ

プロ野球は大丈夫?


西武の松阪投手がポスティングシステムにおいて約六〇億円で入札された。阪神の井川投手は約三〇億円だった。
 これらのお金は選手個人でなく球団に入るお金である。推定年俸ではあるが、西武の全選手の総年俸が約二〇億円とのことであるから、西武は松阪投手を放出したことで約三年分の選手の総年俸を得たことになる。
 我々がプロ野球を見に行くのは何のためであろうか。もちろん贔屓の球団があって、その球団を応援に行く人も多数おられよう。しかし、自分では逆立ちしてもできない技術やパワーを楽しむこともプロ野球の醍醐味であることも否定できないであろう。イチロー選手や福留選手の外野からの矢のような送球を見て、「すごいなぁ」と感動するのは私だけではないはずである。

 ドラフト制度の弊害として選手が入りたい球団に入れない面があったからこそ、FA制度を導入したのではなかったのだろうか。「一軍の出場選手登録日数を、年一四五日以上を一年と計算し、それが九年となったとき」に選手はFAの権利を取得し、自らの行きたい球団に移籍できる。球団にとって必要不可欠な選手がどうしても大リーグに行きたいのであれば、FA権を取得してから退団せよと言えばよいのである。
 しかし、プロ野球も球団経営がある。テレビのプロ野球中継の視聴率の低下が問題となっているとおりプロ野球の人気が下降気味でもあり、経営状態は芳しくないようである。必然的に、売れるものは高く売って稼ごうという心理が働くのは、一般の会社を見ていても納得できない訳ではない。

 しかし、それでいいのだろうか。優秀な選手に育ててポスティングシステムで高く売るという今のシステムを維持する限り、優秀な選手の大リーグ流出に歯止めは利かない。自分ではできない一流のプレーを見に行ったお客さんが、満足することなく帰宅すれば、二度と球場に足を向けてもらえなくなるのではないか。弁護士としての経験で申し上げれば、破産が近づいた会社が採る経営手法を球団が採用しているように思えてならない。目先のお金だけで動くのは経営とは言わない。自らの商売のセールスポイントは何か、お客さんのニーズはどこにあるかを真摯に検討し、場合によっては目先の利益を度外視しても信念を貫く経営があっても良いのではないだろうか。

 個人事業主でもある広島の黒田選手がFA権を取得しながら、金銭の問題でなく、広島相手に投げる自分をイメージできないとして広島に残留したことを爽やかに思うのは私だけではあるまい。(NU)