【言わせてちょ】 司法修習生の就職難

 

 司法修習生という身分をご存じであろうか。簡単に言うと司法試験に合格して、実務家になるまでの間の研修生のような身分である。  司法修習生は1年または1年4ヶ月の修習期間中に、裁判官、検察官、弁護士の実務を体験した上でどの立場になるかを選択することができる。
 ところが、裁判官、検察官は省庁の予算の都合があるのか事実上定員が決められている。当初からの弁護士志望者に加えて、希望しながら裁判所、検察庁に就職できなかった司法修習生も、弁護士を目指すことになる。
 これまでは、弁護士になる司法修習生は、どこかの法律事務所に勤務弁護士として就職し、実務家としての研鑽を積むことができた。研修期間だけでは学びきれなかった部分を、雇い主である弁護士の指導を受けながら、仕事を通じて習得することができたのである。
 ところが、司法試験の合格者が飛躍的に増大した。平成3、4年ころまで年間500人程度であったが、今や3000人の時代となったのである。他方、勤務弁護士を雇い入れることの可能な弁護士の大多数は年間500人程度の時代に合格した弁護士であり、母数の差が大きい。そのため、就職希望の司法修習生の数と較べて、受け入れることの可能な法律事務所の数が大幅に少ない状態にある。中部地区であれば、あと数年は何とか就職可能であろうと予測されている。しかし東京では、どこにも就職できず、やむなく最初から自分で(もしくは数人で)事務所を開設せざるを得ないケースも既にあると聞く。
 たしかに弁護士は市民と司法の最初の接点であり、弁護士が身近な存在になることは利用しやすい司法の実現に大切であるが、法律事務所がそこかしこに多数あれば良いというものでもあるまい。
 また、司法を担うのは弁護士だけではない。裁判官、検察官も合格者数の増加に比例して増員しないと司法として機能しない。