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社長 |
労働審判制度って一体何ですか?
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弁護士 |
労働審判制度とは、労働関係に関するトラブルを解決するために、今年の4月から始まった新しい制度のことですよ。
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社長 |
えっ、そんな制度が始まっていたなんて知らなかったなぁ。労働審判制度ってどこで行っているのですか?
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弁護士 |
地方裁判所で行われます。愛知県の場合でしたら名古屋地方裁判所だけで行われており、支部では行われていません。
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社長 |
それは、訴訟とは違うのですか?
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弁護士 |
訴訟ではありません。労働審判は、労働審判官(裁判官が行います)の他に労働関係に関する専門的な知識をもった労働審判員二名が加わって構成される労働審判委員会が行う手続きなんですよ。
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社長 |
その労働審判員はどういう人ですか?
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弁護士 |
労働審判員は、労働者又は使用者の立場で実際の労働紛争の処理に携わった経験のある方で、労働関係の実情や制度等の知識を身につけている方です。例えば、労働組合の役員や企業の人事や労務の担当者などですね。労働審判員は、労働者又は使用者のいずれの立場の経験がある場合でも一方当事者の味方となるわけではありません。あくまでも中立公正な立場で審理判断に加わるんですよ
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社長 |
へぇ〜。他にも特徴はありますか?
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弁護士 |
はい、手続きが迅速だということです。労働審判は原則として3回以内の期日で双方の言い分を聞き、争点を整理して証拠調べを行います。その間に話し合いによる解決の見込みがあれば調停を試みて、調停がまとまらなければ審判を行うのです。
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社長 |
審判って判決みたいなものですか。
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弁護士 |
はい、労働審判が確定すればそれに基づいて強制執行を行えるという点では判決と同様の効果があるといえますね。でも、労働審判では判決よりもっと柔軟な解決を図ることも可能なんです。
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社長 |
どういうことですか?
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弁護士 |
例えば、審理の結果、事業主の行った解雇が無効であることが判断された場合、判決であれば解雇が無効であるという内容になりますが、労働審判の場合には事業主が労働者に解決金を支払って労働関係を終了させるといった内容の審判を行うことも可能なんですよ。
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社長 |
へぇ、柔軟なんですね。では、どんな労働問題でも労働審判の対象となるのですか?
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弁護士 |
労働審判の対象となるのは、解雇や賃金不払いなどの個々の労働者と事業者との間に生じた紛争です。集団的な労働問題は対象となっていません。また、審理は原則として3回以内の期日であることからすればあまり複雑な事案は適していませんね。
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社長 |
3回以内という制限があると言い分を尽くすのは大変そうだなぁ。
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弁護士 |
そうですね。期日に向けて主張・立証の準備を十分行う必要があるので、やはり、弁護士に依頼することが望ましいですね。
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社長 |
じゃあ、そのときはお願いしますね。でも、審判が出たら必ず従わなくちゃ駄目なんですか?
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弁護士 |
労働審判の内容に納得できない場合には、2週間以内に異議の申立をすれば労働審判はその効力を失います。その場合、事件は訴訟に移行することになるのですよ。
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社長 |
本格的な裁判に移るっていうことですか?
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弁護士 |
そうです、審判の申立があったときに遡って訴訟があったものと扱われることになります。申立書が訴状として扱われます。又、審判が出される前であっても労働審判委員会が事案が複雑すぎるなど、労働審判手続きを行うことが適当ではないと判断した場合にも訴訟に移行することになるんですよ。
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社長 |
訴訟に移行した場合これまでの続きをするのですか?
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弁護士 |
いいえ、訴訟に引き継がれる資料は申立書だけですので、改めて主張立証を行う必要があります。
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社長 |
その場合は一からやり直しというわけですか。色々話を聞いて、労働審判にはメリットもデメリットもありそうですね。
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弁護士 |
そうですね、労働関係のトラブルを解決する手続きとしては、労働審判手続きの他にも、民事訴訟や民事調停、地方労働委員会におけるあっせん、弁護士会が行っているあっせん・仲裁など色々とありますから、事件の内容やそれぞれの手続きの特徴を考えて適した手続きを選ぶことも重要ですね。
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社長 |
はい、わかりました。でも、従業員とのトラブルが起こる前にトラブルが起きないような会社の労務体制を作ることが必要ですね。
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弁護士 |
そうですね、それは大切なことですよ。その時はまた相談に来てください。 |