新会社法、5月から試行 有限会社がなくなるの?(その2)

会社法が新しくなって、株式会社の設立が簡単になるということですね。
そうですね。今年の5月に施行されるのですが,資本金も,いままでのように1000万円は必要でなく,極端な話をすると1円でも設立できます。また,役員も取締役が1名いればいいことになりましたので,株式会社を設立するのも難しくはなくなりますね。


そうしますと,誰かに取締役をお願いしなくても,私が取締役になるだけで会社は設立できるのですね。

そうですね。ただ,株式譲渡制限会社にしておく必要があります。


株式譲渡制限会社っていうのは何ですか。

すべての株式の譲渡に会社の承認を必要とすることを定款で定めている会社のことをいいます。


具体的には,どういうことですか。
株式は本来自由に譲渡できるのですが,この譲渡制限の制度は,会社の定款で定めるのですが,株式をもっている人が第三者に株式を譲渡しようとするときに,会社の承認を必要とすることで,会社にとって,望ましくない人が,株主になるのを防ごうとするものです。


そうしますと,株式の譲渡を制限にしておけば,会社側にとって好ましくない者が入りこんでくることは絶対にないのですね。
いや,分かりにくいかもしれませんが,譲渡制限はあくまで譲渡する場合であって,相続や合併等によって株式が移転する場合は,含まれないのです。そのため,株式の譲渡制限を定めていても,株主が亡くなったり,また,株をもっている会社が合併されたりしてしまいますと,会社にとって,全く知らない人や会社が株主となってしまう場合がありました。
また,場合によっては,遺産相続のときに,社長がもっている株を誰が取得するかで争いになってしまい,事業の承継がうまくできなくなってしまうこともないわけではありません。


そうしますと、どのようにしていても、会社にとって望ましくない者も株主となってしまうということですか。
従来の制度では,どうしてもそのようなことが起こってきてしまいました。そこで,新会社法では,定款で定めることによって,相続や合併等で株式を取得した者に対して,会社がその株式を売り渡すよう請求できる制度を新たに設けました。


どのような手続が必要になるのですか。
まず,売渡請求をしようとするときには,対象となる株式,株主等を特定して,株主総会の特別決議をすることが必要となります。


そうすると,自分にとって好ましくない者が、株を相続したりした場合には,会社の方から売渡請求をすればよいということですね。
ただ,売渡請求をするには,相続等があったことを知った日から1年以内に,請求する必要があります。 


株式の売買価格はどのように決めるのですか。
当事者で協議して決めていくのですが,協議が整わない場合には,裁判所に申立をして価格を決めてもらうことになります。


何か面倒ですね。
これは,従前,譲渡制限株式につき,株主が譲渡しようとする相手方への譲渡を会社が承認せず,譲渡相手方を指定した場合にも,価格について話合いができない場合には,最終的には裁判所で決めていたのと同様です。
ただ,注意しないといけないのは,会社の方で売渡請求をしてから,20日以内に,裁判所に申立をする必要がある点です。


そうすると,申立を期間までにしなかったらどうなるのですか。
その場合には,既に行った売渡請求が認められなくなってしまい,この手続では,株式を取得することができなくなります。
このような期間制限があるのも,従前、譲渡制限株式について,株主が譲渡しようとする相手方を承認しないで,譲渡相手方を指定して,その譲渡相手方が売渡請求をする場合と同様です。


それ以外に注意することはありますか。
あくまで,この制度は,会社が,相続等によって,取得した者に対して,株式の売渡を請求するものですので,会社に一定の資産がないとできません。


どのような制限があるのですか。
これは,自己株式を取得する場合も同じなのですが,配当する場合と同様に,剰余金の分配ができる範囲について,一定の制限が定められていますので,その範囲でしか売渡請求ができないこととなります。
もし,この分配可能な額を超えて剰余金の分配をしてしまいますと,分配をした取締役やそれに同意した取締役は,その分配額を弁済する責任を負うことになります。これは,過失があるかどうかに関係なく,発生しますので,十分注意する必要があります。


そうしますと,私の場合,子どもが3人いるのですが,この会社が順調にいった場合に,もし,遺産で争いが生じてしまい,株が3人の子どもたちにわかれてしまうようなときには,会社の方で売渡請求をすることで,事業承継をうまくできるということですか。
そうですね。この売渡請求は,経営者以外の者がもっている株の相続等に対応する場合のほか,経営者自身のもっている株にも活用できますので、そのような形で解決することもできるでしょう。
ただ,他の相続人に相続させるものがあるか,遺留分に相当する現金・預貯金があるか等の問題もあり,一概にどのような方法がよいとはいえませんが,遺言書で,後継者の方に株を相続させる方法が安全ではないでしょうか。
また,最終的には,株式を取得し,議決権を行使されるのを防げばよいとも考えられますので,後継者以外に相続させる株式を議決権制限株式にしておくことも一つの方法といえましょう。特に,従前,発行済株式総数の2分の1を超えて,議決権制限株式を発行することができませんでしたが,新会社法では,譲渡制限会社については,このような制限も撤廃されますので,より柔軟な対応ができるといえます。


いずれにしても,まずは会社を設立し,会社を発展させることが先決ですので,改めて,相談にきます。