豊橋でシンポジウム開催
現在、多くの環境問題が生じていることは皆さんご存じのことと思います。その多くは、人間の活動が原因であり、人間の活動を規制するための適切な制度が用意されていないところに問題があります。
この問題に対応するため、愛知県弁護士会では公害対策環境保全委員会を設置して、環境問題の発生を予防し解決するための適切な制度、枠組みの構築のために活動しています。
【どのような活動をしてきたか】
当委員会は、我々の回りの環境問題について継続的に調査・研究し、提言を発表したり、シンポジウムを企画開催するなどの活動をしています。
なぜ弁護士が環境問題について活動するのか?という質問をよく聞きます。我々弁護士は市民の基本的人権を保護することが使命の一つとされていますが、環境は私達の生存の基盤であり、環境が破壊されたところに私達の人権も成立しません。その意味で、環境問題は人権問題でもあるのです。当委員会もこのような考え方のもとに活動しています。
当委員会のこの数年の主な活動は、土壌・地下水汚染、藤前干潟、万博と海上の森、中部国際空港、現在取り組んでいる設楽ダムの問題など多岐にわたります。これらの問題について、意見書を提出したり、シンポジウムを開催したりしてきました。これらの活動のいくつかについては、愛知県弁護士会のホームページにも掲載されています。
【シンポジウムの開催】
愛知県弁護士会が平成17年11月19日午後、豊橋市で開催するシンポジウム「21世紀の環境アセスはどうあるべきかー設楽ダムのアセスメントを討論する」をご紹介します。
設楽ダムは、豊川上流の愛知県設楽町に国交省が建設を計画している利水、治水等を目的とする多目的ダムです。総貯水量1億トン、建設費は約2000億円(1997年度単価)を見込んでいます。現在、環境アセスメント手続が行われており、今年中にも環境影響評価準備書が縦覧に付される見通しです。
私達愛知県弁護士会が04年2月に開催したシンポジウム「豊川の在り方を考えるー設楽ダムは必要か」では、過大な水需要予測や洪水調節機能などについて、ダムの必要性に対する強い疑問が出され、他方で、ダム建設による周辺地域や三河湾に対する環境破壊の原因となるとの予想も出されました。
【理解できない国交省の態度】
設楽ダムは、環境影響評価法が施行された後の初めての大型ダム計画と言われており、設楽ダムの環境影響評価のあり方は今後の環境影響評価のあり方においても先例的な意義を持つことが予想されます。
ところが、昨年(平成16年)12月に公告縦覧に供された方法書では、市民から出されていた代替案(ダム無し案)については全く検討事項となっておらず、調査地域もダムサイト周辺のみであり、しかも新たな環境調査はしないとしており、これでは最初から環境アセスメントの結果が決まっていると言っているようなものです。過去の環境アセスメントは実効性を持たず“アワスメント”だと批判されて来て、その反省から環境影響評価法が制定されましたが、国交省は旧態依然として市民の意見には耳を傾けない態度がありありと見えます。
【環境アセスメントは重要】
このように現在進行中の設楽ダムの環境アセスメントは、日本の今後の環境政策にとっても大変重要な位置にあります。環境アセスメントが機能しないと、環境破壊を引き起こす開発が無理やり実施され、後々まで禍根を残すことになります。
そこで、今回のシンポジウムでは、環境アセスメントが真に実効性を発揮するよう、設楽ダムの環境アセスメントを例にとり、21世紀型の環境アセスメントはどのようなものであるべきかを議論しようとするものです。
ぜひ、ご出席下さい。