支部だより 「西三河支部たより〜豊田の現状〜」

 
 今年4月に豊田市と周辺町村が合併し、新生豊田市が誕生しました。人口は約41万人となり名古屋市に次ぎ愛知県内2位、面積は918・47平方キロメートルで、名古屋市をぬき愛知県内1位となりました。私は、その豊田市内にある法律事務所に所属する弁護士です。

 愛知県弁護士会西三河支部には、名古屋地方裁判所岡崎支部が管轄する西三河地域に事務所を構えている弁護士が所属しており、現在45名の弁護士がいます。その中で、豊田市内に事務所を持つ弁護士は6名です。岡崎市に29名の弁護士がいるのと比較すると、広大な面積と岡崎市以上の人口をもっているにもかかわらず、弁護士数が少ないのが現状です。そのため、事務所での法律相談だけでなく、豊田市内で行なわれる弁護士会、市などが主催する法律相談も、いつも予約でいっぱいになっています。

 一般的に言うと、弁護士数が少ない地域の弁護士は、特定の専門分野だけを扱うことはできません。それでは、司法サービスのニーズに応えられないからです。相談を受ける内容は、会社からの相談、お金の貸し借り、近隣問題、離婚、相続など多種多様です。専門外なので他の弁護士に聞いて欲しいと回答したのでは、地域に密着した業務を行えません。必然的にどのような種類の事件でも取り組む「何でも屋」ということになります。

 弁護士の活動はさまざまです。法律相談がその基本ですが、相談だけで解決できないものは、受任する(委任契約を結び弁護士が事件解決に当たる)ことになります。最終的に訴訟になる場合もありますが、すべての事件を訴訟で解決するわけではありません。相手方との交渉で解決する場合もありますし、裁判所の調停、弁護士会のあっせん仲裁、他の紛争解決機関を利用するなどさまざまです。裁判には、大きく分けて民事裁判と刑事裁判があります。刑事裁判は、国選弁護事件がほとんどです。

 法律相談は、事務所だけでなく岡崎の弁護士会、豊田市役所・旧小原村や旧稲武町などの支所、顧問先の企業や団体などでも行なわれます。 
民事訴訟は、岡崎市にある名古屋地方裁判所岡崎支部で行うことが多いですが、名古屋市にある名古屋地方裁判所で行なうこともあります。簡易裁判所で扱われる事件の範囲が90万円以下の事件から140万円以下の事件に拡大されたことから、豊田簡易裁判所の事件も増えています。

 刑事事件の弁護人になった場合には、被疑者・被告人が身柄を拘束されている警察署や拘置所に行って面会しなければなりません。豊田市内で起きた事件の被疑者・被告人が必ずしも豊田警察署で身柄を拘束されるわけではありませんので、離れた警察署まで行くこともしばしばです。事件現場の確認や被害者へのお詫びなどのために出かけることもあります。移動手段は、もっぱら自動車で、1日に100キロ以上走ることもあります。

 裁判所から離れた地域の弁護士は、移動距離が長くなり、移動のために時間を割かれることが最大の問題です。しかし、弁護士を利用する市民のみなさんの立場からすると、居住地の近くで気軽に弁護士を利用できる利点があります。今後も豊田市における司法サービスの充実をはかる一助になればと思っています。