コンプライアンス経営に向けて 

      行動の指針・規範を宣言
            社員意識の徹底めざす


1 コンプライアンス経営という言葉をここ数年耳にする。法令遵守経営とも訳されるが、単に、法令遵守のみが期待されるのではなく、更に、社会の構成員としての企業、企業人として求められる価値観・倫理観をもって公正かつ適切な経営を実現することまで期待されているといえる。
 昨今、企業不祥事の発生が、経営悪化を招くのみならず、企業の存亡をも危うくするものであることが分かっているはずであるが、不祥事に関するニュースは後を断たない。

2 企業不祥事の内容も、総会屋への利益供与、贈収賄等といった一部のトップのみが関与する、従来型の形態にとどまらず、牛肉偽装問題、リコール隠し等にみられるような、トップの関与のみならず,業務の現場における違法行為が原因とされるものも多い。
 また、問題が社内で分かれば、社内で解決されるべきところであるが、
不祥事発覚の契機が内部告発である例も少なくない。

3 このようななか、企業はどのように対処すればよいのであろうか。
(1) 企業の行動指針・社員行動規範の策定
 企業のコンプライアンスに対する基本方針を宣言するとともに、社員の行動指針を示し、社員の意識も徹底する。
(2) コンプライアンス組織体制の確立
 コンプライアンス委員会といった専門機関を設けることも方法として考えられるが、現在の経済状況下において、そのような専門機関を設置することが難しいのが多くの企業の現状といえる。
 そのため、内部監査システムや法務部門にコンプライアンス確立への役割が期待されるところといえ、監査役・監査役会によるチェック機能への期待も大きいといえる。
そして、社員からのコンプライアンスに関する問い合わせ、通報を受けるための窓口が必要といえるが、この窓口設置に替えて、社外監査役や外部弁護士(顧問弁護士以外が望ましい)が情報の受け手となる体制も考えられる。なお,このような情報の受け手が,今後施行される公益通報保護法においても期待されるといえる。
(3) 研修等
 具体的な場面での問題行動を事例集にしたり、研修をする等して、各社員に対し、何が問題となり、どのような行動をとるべきかの理解を周知徹底する。

4 このような形を通じて、コンプライアンス経営の実現を目指すのであるが、コンプライアンス体制の根幹をなすのは、取締役会であり、その実現は各取締役の自覚に負うところが大きいといわざるを得ない。