法改正で簡易裁判所を身近に


    審判対象事件を拡大
        迅速な対応と解決めざす

 簡易裁判所は、国民に親しみやすい裁判所として設立されたものです。
 愛知県内においても名古屋簡易裁判所のほか、名古屋地方裁判所の支部がある一宮、半田、岡崎、豊橋に、また、それ以外にも春日井、瀬戸、津島、犬山、安城、豊田、新城に簡易裁判所があります。
 そして、簡易裁判所においても民事事件、刑事事件が審理されていますが、民事事件については、
(1) 調停事件
(2) 支払督促事件
(3) 比較的軽微な訴訟事件
(4) 少額訴訟事件
等が扱われており、調停事件としては、支払不能に陥ってしまうおそれのある債務者が経済的に再生するために、複数の債権者との調整を図る特定調停事件もあります。
 このように、国民に身近な裁判所として期待されている簡易裁判所について、以下の法改正がなされ、本年4月から施行されています。

1 訴訟事件で扱える事件の拡大
 訴訟事件については、当事者の合意があるものは別として、争いの対象が90万円を超えないものについてのみ簡易裁判所で審理されていました。
 今回の改正では、その対象となる事件の範囲を広げ、争いの対象となっている金額(評価)が140万円を超えないものは、簡易裁判所で審理されることになりました。

2 和解に代わる決定制度
 簡易裁判所に限らず、民事事件については、当事者間で合意ができれば、和解によって事件が解決でき、話し合いで解決できないものについてのみ判決が言い渡されることになります。
 この点、従前から簡易裁判所に特有なものとして、金銭の支払を目的とする事件については、裁判の提起をされた者が出頭しない場合でも、その者の意向を受けて一旦調停手続にしたうえで(実際には、和解的解決を図るために調停手続にする形をとっていたのであり、特に期日が別に指定されるわけではありません)、裁判所が分割払等を内容とする「調停に代わる決定」という運用がなされていました。今回の改正で、当事者間に争いがない場合には、裁判所はこのような調停手続にすることなく、相当であるときには期限の猶予、分割払等の定めをつけて、金銭の支払を命ずる決定をすることができることになりました。
 このように、裁判所が被告側の資力等を考慮して和解的解決を図ることができるようになりましたが、あくまで和解ではないため、その決定の内容に不服がある場合には二週間以内に異議を申立てることができ、従前の裁判手続どおり結局は一括払いを命ずる判決の言い渡しがなされることになってしまいますので、原告側の意向を尊重して行うことになります。

3 少額訴訟手続で扱うことができる事件の拡大
 少額訴訟手続は、平成8年に創設された制度であり、紛争額に見合った時間と費用と労力で解決が図れるように、簡易迅速な手続が設けられたものです。一番の特徴としては、原則として裁判所に出頭するのは1日だけで済むように、期日は1回しか開かれません。そのため、一般の民事事件では、争いがある場合には何回も期日を重ねて、お互いの言い分を整理したうえ証人を調べたりするわけですが、少額訴訟手続では、即時に取り調べができる証拠に限られており、証人を調べる場合にも第1回目の期日に法廷に出頭し、その日に取り調べることになります。そして、判決についても、通常の民事事件の場合、改めて期日が指定されて言い渡されるのですが、少額訴訟手続の場合、第1回目の期日の審理終了後直ちに判決が言い渡されることになっており、その内容も3年以内の支払猶予にすることもでき、支払期限の定め、分割払、これらと合わせて遅延損害金の免除を定めることができることになっています。
 このような少額訴訟手続については、従前30万円以下の金銭の支払の請求を目的とする事件においてのみ認められていました。ただ、簡易迅速な解決が図れる制度として年々利用件数が増えており、より多くの事件がこの制度での解決が図れるようにするため、今回の改正で30万円の上限が60万円にまで引き上げられました。
 もっとも、あくまで一般の民事手続での解決を排除するものではないため、少額訴訟手続によるか、通常の民事訴訟手続によるかを選択することができます。ただ、(1)少額訴訟手続を提起された被告が、通常手続での審理を求めた場合、(2)裁判所が少額訴訟手続によることが相当でないと判断した場合には、通常訴訟手続によって審理されることは改正前も後も同じです。

4 簡易裁判所の今後について
 このように、簡易裁判所で扱うことができる事件の範囲が広がり、また、その事件の解決についても和解に代わる決定や、少額訴訟事件での判決のようにかなり柔軟性をもった内容が可能といえます。
 ただ、簡易裁判所では、調停事件のなかでも、特に特定調停事件が激増しており、かなりの事件数に上っています。そのため、事件数の増大に裁判所の人的・物的施設の対応が十分に図られないと、たとえば、少額訴訟手続においても、第1回目の期日の指定があまりに先送りになってしまい、国民の信頼を失う危険も孕んでいるといえます。
 弁護士会としては、簡易裁判所の趣旨にのっとり、国民に身近で簡易迅速な解決を図れるよう、協力していきたいと考えています。






愛知県弁護士会

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