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社長 |
先日は2人もノーベル賞受賞者が出ましたね。
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弁護士 |
企業の研究者が選ばれたことは、今後社内の研究者の励みにもなりますね。
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社長 |
ただ、研究所で働く従業員が仕事上発明したものが特許権として登録になった場合に、退社した後に莫大な金額を会社に請求してくる例があるようですが、法律上はどうなってるのですか?
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弁護士 |
会社の仕事として従業員が研究した内容が特許として権利になった場合(これを職務発明と言います)、会社はその特許権を無料で使わせてもらうことができます。会社が給与を支払って研究させた成果ですから、会社は無条件で実施する権利が認められるわけです。
但し、この規定は会社の業務として行ったものが対象で、業務に属さない発明は従業員固有の権利です。また、職務発明に属さない発明について使用者側が事前に権利譲渡を義務付ける内容の契約や就業規則を定めても無効とされます。
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社長 |
会社は、使わせてもらえるだけなのですか。
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弁護士 |
職務発明については、事前の合意や会社の就業規則などに定めがあれば、会社がその特許権を譲り受けたり、専用実施権といって独占的にその特許権を使う権利を設定することができます。
会社自身が権利者となったり、会社が権利を使う相手方から使用料金を受け取ることができるのです。
ただ、その場合には、「相当の対価」を会社が従業員に支払わなければなりません。
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社長 |
それは幾ら請求されるのですか?
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弁護士 |
相当の対価の算定については、「その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない」とされています。
青色ダイオードの発明では、特許の発明をした従業員が退職後に会社に対して特許権の帰属や20億円の対価を請求して裁判を起こしています。
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社長 |
特許が取れて儲かったというだけで20億円の請求ですと、ノーベル賞を受賞した発明となると、幾らになるのか怖いですね。
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弁護士 |
この「相当の対価」の算定に際しては、その発明そのものではなく、会社が取得した「特許権」により得られた利益が評価の基準となります。
いかに優れた発明でも、特許として権利化されない限りは独占的な実施はできませんし、特許権の使用料金も手に入りません。ですから、ノーベル賞を受賞したとしても、特許として権利化された範囲が狭く、会社として大きな利益が得られていない場合には、金額がそれほど大きくならない場合もあるのです。
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社長 |
取引先で、「特許権が登録になったら数万円の報奨金」という取り決めをしていた会社がありましたが?
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弁護士 |
そうした一律かつ低めの取り決めの妥当性が今問われていると言えるでしょうね。
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社長 |
大口顧客を開拓した営業社員も随分会社に貢献してると思うのですが、営業社員にはそうした扱いはないのですか?
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弁護士 |
賞与に反映させたり、別途取り決めがあればともかく、法律の上では聞きませんね。ただ、従業員の給与が実績主義になりつつある現状では、将来的には出てくる話かも知れませんね。
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社長 |
うちの会社にも何人か研究開発部門の職員がいますが、誰か大儲けできる特許を開発してくれないもんですかねぇ。
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弁護士 |
それに備えて、就業規則なども整備しておかれることが必要だと思いますよ。
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