特許訴訟専属管轄化問題
最近、「特許」とか・「知的財産権」という言葉をよく耳にします。新しい技術や従来に無い製品を発明した場合、特許庁で特許権として登録が認められれば、一定期間その発明を独占的に使用できるという制度です。同様に、デザインに関する権利が「意匠権」であり、いわゆるブランドに関する権利が「商標権」です。

 特許権の権利者は、権利を侵害する者が現れた場合には、侵害行為の差止や損害賠償の請求が認められます。こうした特許権に基づく訴訟が「特許訴訟」とよばれるものです。こうした特許訴訟については、裁判官も技術的な知識が必要なため、名古屋など裁判官が大勢いる裁判所では特定の裁判官に事件を集中させており、東京と大阪では特許訴訟しか扱わない専門部が作られています。

 現在は、特許訴訟については、法律で認められた管轄さえあれば、地元でもできますし、希望すれば東日本(名古屋以東)は東京の、西日本は大阪の専門部でも裁判が受けられます。しかし、今制度の見直しが検討されており、東日本は東京地裁、西日本は大阪地裁の専属管轄とすることが検討されています。「専属管轄」ということは、「他の裁判所に裁判を起こすことを認めない」ということであり、名古屋在住企業間の特許訴訟についても(北海道の企業間の紛争も同じです)、東京まで出て行かないと裁判ができないことになるのです。 特許訴訟については裁判官に技術的知識が必要なことは否定できませんし、現時点においてはそうした裁判官の数が限られていることも事実です。しかし、特許紛争といっても、中には少額の事件もあります。こうした場合に、全て東京まで行かなければ裁判が受けられないということになれば、旅費・日当など経費の面から訴訟を断念する場合も出てくるのではないかと懸念されます。

 東京、大阪両地裁への専属管轄化の方針は、東京の関係者の多い政府の審議会ではほぼ決まったようですが、我が国が知的財産権立国を目指すという以上は、地方の権利者を保護する観点からも、将来的には全国各地に特許訴訟の専門部を作るべきではないかと思われます。そのためには、司法予算の拡充が必要であり、国民の皆さんの理解が必要不可欠です。司法制度改革は、皆さんの企業経営と無関係ではないのです。