社長: |
実は、うちの女性従業員A子さんから、「夫から暴力を受けている」と相談されたのですが。
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弁護士: |
DV(ドメスティックバイオレンス)ですね。
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社長: |
はい。A子さんによると、結婚して一〇年以上も暴力を受けてきたらしいのです。どうしてこれまで逃げ出そうとか離婚しようとかしなかったのでしょうね。
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弁護士: |
一般に、暴力を振るう夫には、緊張が高まる第一期、暴力が爆発する第二期、暴力を謝罪し優しさや愛情を示す第三期があると言われています。このサイクルが繰り返されるために、妻は、暴力を振るわれても、夫は本当はいい人なんだ、もう一度やり直してみようと考えてしまい、逃げようとしないのです。また、余りに長い間暴力を受け続けると、逃げ出そうという気力さえ起きなくなりますよね。それに、子供がいる場合には、離婚して生活することが経済的に困難という現実的な問題もあると思います。
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社長: |
A子さんのご主人と会ったことがありますが、会社勤めの、礼儀正しい普通の人で、とても暴力を振るうようにはみえないのですが。
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弁護士: |
暴力を振るう人が、必ずしも粗暴的な性格であるとかアルコール中毒であるとか特別な人であるとは限りません。表面的には何処にでもいるごく普通の男性が、家庭で妻に暴力を振るうということがあるのです。
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社長: |
でも、あのご主人が暴力を振るうからには、A子さんがご主人を怒らせるようなことをしたんじゃないかと思うのですが。
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弁護士: |
仮にA子さんが夫の気に障るような言動をしたからといって、A子さんを殴ってよいはずはありませんよ。それに、そもそも夫が妻に暴力を振るう背景には、「男性は、女性より優位な地位にあるのだから、暴力により女性を支配することは許されるのだ」という社会的な差別意識があります。だから、A子さんの夫のようなごく普通の男性でも、気に入らないことがあると、妻を暴力という方法で支配しようとしがちなのです。
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社長: |
なるほど。A子さんを責めたり、「どうせ夫婦げんかでしょう」などと冷たくあしらってはいけないのですね。
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弁護士: |
そうですね。これまでは、警察や裁判所でも、「民事不介入」、「法は家庭に入らず」などとして、DVに対して十分な対応ができていませんでした。しかし、DVによる被害者が後を絶たないことから、昨年、いわゆるDV防止法という新しい法律が施行されました。この法律では、被害者の申立で裁判所が加害者に対し保護命令を出すことが認められています。
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社長: |
保護命令とはどのような命令なのですか。
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弁護士: |
加害者に対して、@六ヶ月間、被害者の住居等においてつきまとったり、被害者の住居や勤務先等を徘徊することを禁止すること(接近禁止命令)、A二週間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること(退去命令)、を命じるものです。
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社長: |
命令に違反するとどうなるのですか。
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弁護士: |
一年以下の懲役か一〇〇万円以下の罰金が課せられます。
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社長: |
刑事犯罪になるわけですね。では、どのような場合にその命令が出してもらえるのですか。弁護士 大まかには、 ま
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弁護士: |
暴力により生命又は身体に重大な危害を受ける恐れが大きいことを立証する必要があります。過去に暴力を受けたときの診断書や写真があると立証がしやすいです。また、暴力について、都道府県の配偶者暴力相談支援センターの職員か警察職員に事前相談をしていることが必要です。事前相談をしていない場合には、これまで暴力を受けた状況や今後さらに暴力をうけると思われる事情などを記載し公証人の認証を付した宣誓供述書が必要になります。
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社長: |
この申立は結婚している人しかできないのですか。
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弁護士: |
離婚した人でも婚姻中に暴力を受けていればできます。それに、婚姻届を出していなくても、事実上の夫婦として生活している人なら申立ができます。
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社長: |
私が女房から叩かれたら、男性の私でも申立ができますか。
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弁護士: |
法律上はできます。でも、要件を満たすかが問題ですが。
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社長: |
ところで、A子さんは、自分が逃げても、ご主人が子供の学校に押しかけてきて子供を連れていってしまうと心配していたのですが。
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弁護士: |
確かに子供は保護命令の対象になりません。そこで、子供の虐待が予想されるような場合には子供への接近禁止等を求める仮処分を申立てる必要があります。
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社長: |
よくわかりました。今度、直接、A子さんの相談に乗ってやってください。
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弁護士: |
そうですね。詳しいことはその時にお話しましょう。
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