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社長 |
今日は会社の相談ではなくて、私の父親のことで少しご相談したいのですが。
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弁護士 |
お父さんがどうかされましたか。
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社長 |
実は、父は今年73歳になりますが、2年前に母に先立たれてから元気をなくして、最近は無気力というかぼーっとしていることが多く、このままでは痴呆になるのではないかと心配しているんです。
私の家での同居を勧めているのですが、本人は住み慣れた家を出たくないし、一人の方が気楽でいいからと言っています。
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弁護士 |
お父さんは社長の会社の創業者で私も以前に2、3度お会いしたけど大変にエネルギッシュな人でしたよね。
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社長 |
そうなんです。元気がないといっても、まだぼけたわけではないので、今でも会社の会長職に就いてもらっていて、時々、私が会社の事で相談すると急に元気が出て意見を言うのですけどね。
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弁護士 |
やはり長年連れ添ったお母さんとの離別はショックだったのでしょうね。それに、会社の経営を社長に全面的に任せて隠居したことも影響しているかもしれませんね。アルツハイマー等の病気による場合は別として、お年寄りにとって、社会的な役割が何もなく孤独感が強いことが、痴呆状態になる一因とも言われていますからね。
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社長 |
ぼけ防止のためにもできるだけ会長としてのアドバイスをもらうよう心掛けます。しかし、そうはいっても父の年齢ではこれから少しずつ体力が弱って物事の判断能力も落ちていくのは避けられないと思うんですよ。そうなると、一人暮らしの父のことが心配なんです。
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弁護士 |
具体的にはどんなことがご心配なんですか。
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社長 |
父は自宅不動産の他、2、3の不動産を持っていますし、預貯金も数千万はあるようなので、生活費の心配はないのですが、最近、ときどき怪しい訪問販売業者が勧誘に来たり、通信販売業者からダイレクトメールが送られてくることが多く、父も時にはそれらの勧誘に興味を示すことがあるようなのです。
私から見ると、いかにも胡散臭い業者や商品ばかりで、父には絶対にそういう勧誘には乗せられるなと注意しているのですが、そのうち父がぼけてきたら騙されるのではないかと心配しているのです。そうなった時は、誰か信用できる人に財産管理を頼めないのでしょうか。
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弁護士 |
確かに、判断能力の低下したお年寄りに言葉巧みに近づいて、不当に高価な商品を売りつける悪徳業者等のニュースはよく聞きますね。社長は平成12年4月からスタートした成年後見制度をご存じですか。
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社長 |
成年後見制度ですか。初めて聞きました。どんな制度ですか。
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弁護士 |
痴呆性高齢者や知的障害者等の判断能力の低下した人を保護するために、申請に基づいて家庭裁判所がそれらの人に後見人、保佐人、補助人を保護者として選任して財産管理や身上監護を行うという制度です。これを利用すれば、例え本人が悪徳業者に騙されても、後で契約の無効や取消が主張できるのです。これは以前、禁治産や準禁治産を定めていた民法等の改正、もしくは新たに関係法律が制定されてできたものです。禁治産宣告等と違って、戸籍に記載されることはなくなりました。
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社長 |
将来、父がぼけてきたら成年後見制度を利用すればいいのですね。ただ、父が痴呆になってからでは手遅れなので、まだ元気な内に財産管理の方法を決めておくことは出来ないのですか。
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弁護士 |
そういう事態に対処するため、今回の法改正では、今説明した法定の成年後見制度の他、任意後見制度というものも新たに作られました。これは、今はまだ元気で自分で財産管理ができるが、数年先には加齢や病気等により判断能力が低下するおそれがあるので、その時になったら特定の人、例えば弁護士等に財産管理を開始してもらう委任契約を今の段階で締結するという制度です。
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社長 |
はー。何だか色々と難しいですね。弁護士とかの知り合いがいない人は、どうしたらいいのか分からないでしょうね。
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弁護士 |
そういう人のために名古屋弁護士会では「高齢者・障害者総合支援センター」という組織を作って、成年後見制度や介護保険制度の利用援助や財産管理、遺言作成、虐待への対処等、高齢者や障害者に対する総合的な支援活動を行っています。名古屋法律相談センターでは、毎週火曜日と木曜日の午前9時45分から正午まで先程のような問題に関わる専門の法律相談も行っていますので、是非、利用してください。「高齢者・障害者総合支援センター」は通称「アイズ」と言います。問題の解決には原則として2名の弁護士が「アイズ」の監督を受けながら担当します。いずれの弁護士も高齢者や障害者問題について一定の研修を受けていますので安心してお任せください。
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社長 |
なるほど。弁護士はそういう福祉の分野の仕事にも関わっているのですね。
これからは、私の知り合いでそういう問題で困っている人がいたら「アイズ」を紹介することにします。
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