「取引先が危ない!」〜早めの対応で債権回収を

〜社長:

私の会社では、B社に、商品を納めており、未収金がありますが、最近、B社が危ないのではないかという噂を聞きました。心配になり、取引を打ち切って、商品を引き上げたいと思っているのですが・・・

弁護士

取引をするにあたり、契約書とか作成していますか。

社長

契約書はないと思いますが、どうしてですか。

弁護士

継続的に取引をするような場合、基本契約書を取り交わし、納品後も、支払がなされない限り、所有権を売主に留めるような取り決めをする場合もあり、この場合、商品を引き上げることが可能となるからです。

社長

そのような取り決めがないと商品は引き上げられないのですか。

弁護士

代金不払いを理由に、その商品の売買契約を解除して、商品の返還を求めることも可能といえます。

社長

このような場合、B社が反対しても、引き上げることはできるのですか。

弁護士

いくら、売主に所有権が留保されていたり、契約が解除されていても、第三者の所にあるものを勝手に持ち出すことはできません。B社の人に立ち会ってもらい、了解のもと、引き上げることが必要で、後で問題にならないよう、B社の人から確認の署名をもらっておくとよいです。

社長 結局、B社の協力が得られないと何もできないのですか。

弁護士 その場合には、裁判所に仮処分の申立をして引き上げることを考えた方がよいです。ただ、この場合には、保証金を用意する必要があります。

社長

当然、未収金に見合うだけの商品がB社に残っているとも思えませんが、B社にある他の業者が納めた商品を引き上げて、支払に充てては駄目なのですか。

弁護士

勝手に引き上げてはいけないのは当然ですが、B社の代表者が了解すれば、代物弁済という形で、お金に代えて、商品で支払ってもらう形は可能です。また、B社が取引先に対してもっている売掛金等の債権の譲渡を受けて、支払に充てることも可能です。

社長 債権譲渡も、単に、B社の了解を取ればよいのですか。

弁護士

債権譲渡を受けるには、B社から債権の譲渡を受けたうえ、B社からその取引先に債権譲渡の通知書を出してもらう必要があります。ただ、代物弁済や債権譲渡については、B社が破産したり、他の債権者が問題にしたりすると、効果が否定される場合があります。

社長

破産すると状況が変わってしまうのですか。

弁護士

会社が破産すると、基本的に破産管財人が選任されます。そして、会社の財産をお金に換えて、破産手続に必要な費用、優先的な債権者(不動産に担保を有するもの、未払給与、税金等)への支払等を終えて、残りの資産がある場合に、一般の債権者に、債権額に応じて、平等に配当することになります。このように、破産手続では、平等配当の考えにたっているので、破産直前になって、他の債権者に優先して、代物弁済を受けたり、債権譲渡を受けたりすると、その効力が否定され、お金を戻さなくてはいけなくなる場合があります。

社長

最初にお聞きした、所有権に基づいて商品を引き上げたり、契約を解除して、商品を引き上げても、商品等を返すことになるのですか。

弁護士

破産手続においても、あくまで、破産者の財産をお金に換えるのであって、第三者の商品まで、お金に換えることはできませんので、B社の了解のもと、自分の商品を引き上げた場合には、取り戻されることはありません。また、B社が破産した時点で、社長のところで納めた商品が残っていたり、その商品をB社が売却して、まだ、その支払を受けていないような場合には、先取特権といい、優先的な立場に立てる場合もあります。

社長

B社が破産すると、連絡とかがあるのですか。

弁護士

破産すると、債権者に対して、裁判所から、破産の通知とともに、債権がある場合には債権を届けるようにとの通知があります。そして、管財人が、その債権届が正しいかどうか確認して、そこで認められた債権額を基に、破産手続の中で配当を行うことになります。もし、債権額に争いがある場合には、最終的には、裁判手続が必要になってきます。

社長 破産になったら、債権の回収はほとんど期待できないということですか。もし、保証人とかをつけていればよかったのですか。

弁護士 B社が破産しても、保証人に対して請求することはできます。ただ、B社の社長とかが保証人になっている場合には、会社とともに、保証人も破産してしまう場合が多いので、誰を保証人にするのかが重要となります。

社長 では、どうすればよいのですか。

弁護士 できるだけ、早い時期に債権の保全を図るしか方法はないのです。たとえば、早い時期に、優良な保証人や不動産担保をつけたりすることが考えられます。また、支払を猶予するにしても、手形を振り出してもらう等し、早めに債権回収・保全をしておかないと、最後には回収できなくなってしまいます。

社長 今後は、もっと早く相談に来るようにします。