福島県は、福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」)によって避難を余儀なくされている方々のうち、政府からの避難指示を受けずに避難したいわゆる区域外避難者について、災害救助法に基づく住宅の無償供与を平成29年3月末日で打ち切ることなどを明らかにした。

 福島県は、区域外避難者への住宅無償供与打切りに代わる新たな支援策として、避難元へ帰還する際の移転費用の支援、民間賃貸住宅家賃の支援、公営住宅等の確保に向けた取り組みの実施を発表しているが、これら支援策の実施期間を2年に限定するほか、所得要件を設け、家賃の補助額も一部にとどめるなど、従来の住宅の無償供与という支援内容から明らかに後退している。

 このような支援策の変更は、福島県が国と協議を行い、国の同意のもとに行われたもののようであるが、その根底には、未曾有の大災害である福島原発事故を過去のものとして収束に向けて舵を取ろうという考えが見て取れる。

 しかしながら、福島第一原子力発電所の汚染水問題は未だ解決の目処がたたず、除染作業も不十分であり、除染後の汚染土や放射性廃棄物の最終処分の見通しも立っていない状況が続いており、福島原発事故による深刻な被害が終息に向かっていると言うことはできない。このような状況にあって、元の生活の場所から離れて避難を継続している人達は、将来への不安を抱える中で、不本意ながら避難先で新たな生活を切り開こうと懸命な努力を続けているのであって、そうした避難者への経済的支援を継続することは国を中心とした行政の責務であることは言うまでもない。

 経済的支援の必要性については、避難指示区域からの避難者についてはもとより、区域外避難者についても変わるところはない。原子力災害は、避難指示区域に限局されることなく放射能汚染が広域に及び汚染状況が目に見えないという特性を持ち、また、放射性物質の健康に対する影響は科学的に十分に解明されていない。こうした原子力災害の特殊性に鑑みれば、国が指定した避難指示区域の内外を絶対的な基準として被災者への支援策に差異を設けることに合理性があるかは疑問であり、避難指示区域のみならずその周辺地域に居住していた住民も、自分たちの生命・身体の安全を確保するために避難を選択し、避難を継続することには合理性がある。いわゆる原発事故子ども・被災者支援法も、避難という選択は十分に尊重されるべきものとしている。実際に、愛知県内へ避難をされている方は、平成28年10月1日の時点で、福島県から627人、福島県以外から391人であり、避難指示区域のみならずその周辺地域からも多くの方が避難することを選択している。

 このような状況にも関わらず、区域外避難者に対する住宅の無償提供が打ち切られれば、区域外避難者の生活を圧迫し、避難生活を継続することが困難となり、その結果、避難者の自己決定権(憲法13条)を侵害することともなりかねず、到底看過できるものではない。

 よって、当会は、福島県に対し区域外避難者への住宅の無償供与の打ち切りを撤回することを求めるとともに、国に対し区域外避難者の実情に応じた適切な支援、とりわけ恒久的な住宅支援策を講じることを求める。

平成28年12月14日

愛知県弁護士会 会長 石原真二