政府は、11月15日、南スーダンPKO活動(UNMISS 国連南スーダン共和国ミッション)に派遣される陸上自衛隊施設部隊に「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の新しい任務を付与する閣議決定を行った。新しい任務を帯びた陸上自衛隊施設部隊第11次隊の主力部隊が11月30日青森から出国し(残存部隊も12月には出国)、12月12日から第11次隊による新任務の運用が始まった。

駆け付け警護は、離れた場所にいる国連やNGO(非政府組織)の職員等が武装勢力から襲われた場合に現場に駆け付けて救護に当たる活動であり、宿営地の共同防護は、自衛隊と他国の部隊の共同宿営地を武装勢力の襲撃等から防護する活動である。いずれも、昨年改正された「国連平和維持活動等に対する協力に関する法律」(改正PKO法)によって新たに認められた活動である。同法は、自衛隊が駆け付け警護等の活動を行う場合の武器使用の範囲を拡大し、自己保存型の武器使用だけでなく任務遂行のための武器使用を認めた。

 南スーダンでは、7月に首都ジュバにおいて政府軍と反政府勢力の大規模な武力衝突、戦闘があり、市民数百名や中国のPKO要員が殺害され、10月には同国東北部における政府軍と反政府勢力の戦闘で60人以上が死亡した等の報道がされている。このような情勢下で自衛隊が駆け付け警護等の新しい活動に従事するなら、自衛隊が戦闘に巻き込まれて、自衛隊員が他国の兵士や民間人を殺傷し、また殺傷される危険性が極めて大きい。PKO法に基づいて自衛隊を派遣するためには、①紛争当事者の間で停戦合意が成立していること、②受け入れ国及び紛争当事者が派遣に同意していること等が前提になる(いわゆるPKO参加5原則)。しかし、南スーダン政府と反政府武装勢力の間で停戦合意が維持されているとは考え難い。実際に、反政府勢力の指導者であるマシャール前副大統領は10月20日に「7月に起きた戦闘で、和平合意と統一政権は崩壊した」と述べ、また、UNMISSの軍司令官代理は11月24日に「和平合意が維持されているとは言えない」と述べている。

 このような南スーダンの現下の情勢のもとで、派遣部隊に駆け付け警護及び宿営地共同防護の新たな任務を付与することは、仮に改正PKO法が違憲でなかったとしても、同法に違反する。

 前記閣議決定は、反政府武装勢力が系統だった組織性を持たず、支配地域を確立したとは言えないから南スーダンには「国家に準ずる組織」はなく、武力紛争にあたらないとしている。しかし、現実にUNMISSに対する政府軍の襲撃も発生しており、自衛隊が駆け付け警護等の新任務の遂行のため南スーダン政府軍との間で銃火を交える可能性もあるから、仮に政府解釈の立場に立ったとしても、自衛隊が憲法違反の武力行使に至る可能性は否定できないと言わざるを得ない。

 当会は、上記の理由から、政府に対して、南スーダンに派遣された陸上自衛隊に駆け付け警護及び宿営地共同防護の新任務を運用することを直ちに中止するとともに、南スーダンからの自衛隊の撤収を求める。

2016(平成28)年12月13日

愛知県弁護士会 会長 石原真二