1 CO2排出権取引について、仮装の詐欺的取引か違法な賭博行為に該当するとして、取締役に対する損害賠償責任を認めた判決(東京地裁平成28年9月8日判決)

 本判決は、まず、本件会社の行うCO2排出権取引について、会社の説明によれば、カバー先会社が提示するCO2排出権の価格及び為替レートを指標として相対取引により差金決済取引を行うものであるとのことであり、仮にそのとおりであれば、当該カバー先会社が提示するCO2排出権の価格及び為替レートは、本件会社にも原告にも予見し得ず、またその意思によって自由に支配することができないものとみられるから、偶然の事情によって利益の得喪を争うものというべきであり、賭博行為に該当し公序良俗に違反すると判断した。さらに、本件会社が実際にCO2排出権取引を行っていたことを認めるに足る証拠がないことなどから、そもそも実体のない仮装の詐欺的取引だった可能性が高いとも述べ、いずれにせよ本件取引への勧誘行為は不法行為を構成するとした。

 そのうえで、本件会社の取締役であった被告の責任については、代表取締役に対して違法な本件取引を止めるよう求め、または取締役会を開催して本件取引を中止する措置を取る義務があったにもかかわらずこれを行わなかった点で重過失による任務懈怠があると判断した。被告は、自分は懇請されて取締役に就任したにすぎず、取締役会に出席したことも報酬を受領したこともなく、会社の業務には一切関与していなかったなどと主張して責任を争っていたが、本判決は、取締役就任の経緯や会社内部の事情は、対第三者との関係で任務懈怠に基づく責任を免除されるようなものではないとして被告の主張を退けた。そして、被告が本件会社の役員らの業務執行行為に対する監視監督を怠ったことそれ自体が重過失による任務懈怠であり、因果関係も否定されないとした。

2 日本郵便の転居先情報の回答拒絶について、弁護士会の損害賠償請求を認めた高裁判決を破棄し、報告義務の確認請求について高裁に差し戻した判決(最高裁判所平成28年10月18日判決)

 本件は、未公開株詐欺の事案で、裁判上の和解のあと加害者が和解金の支払いをしないまま所在不明となったことから、強制執行のための所在調査として、愛知県弁護士会が日本郵便に対し加害者の転居先情報について弁護士法23条の2に基づく照会(以下「23条照会」という。)を行ったところ、日本郵便が回答を拒否したため、被害者と愛知県弁護士会が提訴したものである。今般、最高裁判所は、日本郵便の回答拒絶を違法とし愛知県弁護士会の損害賠償請求(主位的請求)を認めた名古屋高裁平成27年2月26日判決を破棄し、日本郵便に報告義務があることの確認請求(予備的請求)について高裁に差し戻す判決を言い渡した。

 本判決は「23条照会を受けた公務所又は公私の団体は、正当な理由がない限り、照会された事項について報告をすべき」と判示しており、その点で意義を有する。また、補足意見も「23条照会に対する報告義務の趣旨からすれば上記報告義務に対して郵便法上の守秘義務が常に優先すると解すべき根拠はない。各照会事項について、照会を求める側の利益と秘密を守られる側の利益を比較衡量して報告拒絶が正当であるか否かを判断するべきである。」と述べる。

 しかし、弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適正な運用を図るためにすぎず、23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものではないとして、弁護士会に対する不法行為の成立を否定した。今後は、差戻しにより、日本郵便に報告義務があることの確認を請求する部分について名古屋高裁において審理されることとなる。

 【判決文は最高裁判所ホームページに掲載】