愛知県弁護士会法律研究部では、平成13年に発刊して好評を得ました「Q&A遺留分の実務」を10年ぶりに改訂し、発刊しましたので、お知らせ致します。
改訂版では、最近、相次いで出された最高裁の判断や関連する学説を織り込むとともに、新法である経営承継円滑化法による遺留分の民法特例についても取り上げています。
書名 | Q&A遺留分の実務 改訂版 |
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編集 | 愛知県弁護士会 法律研究部 |
発行 | 新日本法規出版株式会社 |
サ イ ズ | A5版 |
ページ数 | 478頁 |
発行年月 | 平成23年2月 |
価格(税込) | 4,515円 |
【目次】
第1 遺留分制度について
- 遺留分の根拠
- 遺留分制度におけるローマ法とゲルマン法
- 遺留分制度の問題点
- 遺留分制度の評価
第2 遺言と遺留分
- 遺言と遺留分
- 遺言による遺留分規定の変更
- 遺留分侵害と公序良俗
- 遺留分侵害目的の養子縁組
- 「相続させる」旨の遺言と遺留分、減殺請求
- 後継ぎ遺贈型受益者連続信託と遺留分
第3 遺留分の権利者
- 遺留分の権利者
- 胎児の減殺請求
- 相続開始前の減殺請求
- 養子縁組前の贈与に対する減殺請求
- 代襲相続人に対する贈与と減殺請求
- 遺留分の譲渡・差押え
第4 遺留分の算定
- 遺留分の割合
- 遺留分と配偶者別格の原則
- 遺留分算定の基礎とされる贈与
- 贈与と同視される無償処分・不相当な対価による有償行為
- 生命保険金等と遺留分
- 死因贈与の取扱い
- 1年以内の贈与の判断基準
- 1年より前の贈与の算入
- 遺留分の算定方法(1)
- 遺留分の算定方法(2)
第5 特別受益等と遺留分
- 遺留分と特別受益の関係
- 特別受益の持戻し免除と遺留分
- 遺産の無償使用と特別受益
- 相続放棄者等への生前贈与と遺留分
- 単独相続人への生前贈与
第6 基礎財産の評価
- 遺留分算定と財産の評価
- 金銭の評価
- 相続財産がゼロ又はマイナスの場合
- 減殺請求と価額算定の基準時
- 滅失した物の評価
第7 遺留分の算定と債務
- 控除される債務
- 抵当権付債務・連帯債務・保証債務の扱い
- 返済された債務の扱い
- 減殺請求と相続債務
- 減殺請求における負担付贈与と負担付遺贈
第8 減殺請求権の性質
- 減殺請求権の法的性質
- 減殺請求権の行使と法的効果
- 不可分一体物と減殺請求
- 条件付権利と減殺請求
- 減殺請求と取引の安全
第9 減殺請求権の行使
- 減殺請求の内容...
- 減殺請求権の行使方法
- 減殺請求の具体例
- 減殺請求と対象物の選択
- 遺留分権利者の承継人
- 限定承認と減殺請求
- 遺留分と債権者代位権
- 遺留分と債権者取消権
- 親権者の減殺請求と利益相反
- 認知症の人の遺留分確保
- 受益者の果実返還義務
- 減殺請求と権利濫用
第10 減殺請求の相手方
- 減殺請求の相手方
- 減殺請求の対象となる生前贈与の範囲
- 減殺請求前の目的物の譲渡
- 減殺請求後の目的物の譲渡
- 減殺請求と第三者
第11 減殺の順序
- 複数の贈与と減殺請求
- 共同相続人間の減殺請求
- 減殺請求の順序
- 遺留分権利者による減殺対象の選択
- 共同相続人と第三者に対する減殺請求
- 減殺請求の競合
第12 価額による弁償
- 価額弁償の抗弁と訴訟進行
- 遺留分権利者からの価額弁償請求
- 減殺請求と一部価額弁償の可否
- 価額弁償の抗弁と判決主文
- 価額弁償の終期
- 再抗弁としての価額弁償
- 競売と減殺請求権
- 減殺の目的不動産に対する抵当権設定
第13 遺留分と寄与分
- 遺贈、遺留分、寄与分の優劣関係
- 遺留分を侵害する寄与分の認定
- 寄与分を有する相続人からの減殺請求
- 寄与分を有する相続人に対する減殺請求
- 減殺請求と寄与分の抗弁
- 取戻財産に対する寄与分の主張
第14 減殺請求権の消滅
- 時効か除斥期聞か
- 減殺請求と返還請求権の時効
- 減殺請求権と時効の起算点
- 譲受人と減殺請求権の時効
- 減殺請求と抗弁権の永久性
- 減殺請求と取得時効
- 遺言書の秘匿と時効
- 認知症と時効の進行
- 未成年者の減殺請求と時効
第15 遺留分の放棄
- 遺留分放棄の実情
- 遺留分放棄の許可
- 遺留分の放棄と相続
- 遺留分の放棄と代襲相続
- 遺留分放棄と債務の承継
- 制限能力者の遺留分放棄と利益相反行為
- 遺留分の放棄と他の相続人への影響
- 遺留分の一部放棄
- 遺留分放棄の念書の効力
- 相続開始後の遺留分放棄
- 後順位相続人の遺留分放棄
- 遺留分放棄者と相続人廃除
- 遺留分放棄と即時抗告
- 遺留分放棄許可の取消し
第16 遺言執行と遺留分
- 遺言執行費用と遺留分
- 遺言の執行と減殺請求
- 遺言執行者と減殺請求の相手方代理人
第17 遺留分と登記
- 遺留分侵害と登記(1)
- 遺留分侵害と登記(2)
- 遺留分減殺と登記方法
- 共同相続登記と減殺請求(1)
- 共同相続登記と減殺請求(2)
第18 経営承継円滑化法と遺留分特例
- 経営承継円滑化法と遺留分特例の概要
- 除外合意・固定合意とは
- 除外合意・固定合意の効力
- 民法の遺留分に関する特例の合意の効力
- 民法の遺留分特例による合意と家裁の許可
第19 遺留分と税金
- 減殺請求と相続税
- 法人に対する遺贈と減殺請求
第20 手続上の諸問題
- 減殺請求と調停前置主義
- 減殺請求事件と家事審判
- 減殺で生じた共有関係の解消
- 再転相続と減殺請求
- 遺留分減殺請求訴訟と遺産分割審判の関係
- 遺産分割と共有物分割の違い
- 未分割遺産と減殺請求
- 遺言執行者と当事者適格
- 減殺請求と訴状の請求の趣旨
- 減殺請求訴訟の訴訟物
- 遺贈の未履行と減殺請求
- 減殺請求訴訟と共有物分割の訴えの併合請求
- 減殺請求と保全処分
- 減殺請求と本案訴訟
- 遺留分減殺請求訴訟における文書提出命令等
○判例年次索引
【改訂版はしがきより】
本書を出版してから約10年が経過しました。この聞に相続債務の取扱い等の遺留分に関する重要な判決が数多く出たことや、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の制定に関連して「遺留分に関する民法の特例」が定められたりしたため、これらの新たな論点を加えて、新しいメンバーにより内容の見直しをした改訂版を出すことにしました。
遺留分制度については、我が国が超高齢者社会を迎えて、老後の生活を守るためにする遺言の自由を制約するものであるとして、これを消極的に評価する立場と、相続における共同相続人間の公平を維持するための最後の砦であるとして、これを積極的に評価する立場が対立し、これが遺留分を巡る諸問題の解釈に影響しており、また現行の遺留分規定の解釈や遺言の執行に関する実務の取扱いについても、学説の中から厳しい批判がなされています。しかしながら、我々実務に携わる者としては、最高裁判決を初めとする判例の立場を尊重せざるを得ないため、今回の改訂においても一連の判例の流れを基本として、あくまで実務に役立つものを作るという方針で進めました。このため実務上生ずる問題点を網羅的に取り上げ、また実務で役に立つと思われる情報等を提供する「実務メモ」も大幅に追加しました。
前回は設問の担当者を記してその意見を尊重したため、内容的に統一が取れていないところがあったので、これを止め全体の統一を図りました。
今回も各研究員が日常の業務に携わりながら、その合間に議論をしてまとめたため、もとより不完全なものではありますが、改訂により本書が遺留分の実務により役立つことになれば幸いです。