平成20年度包括外部監査

豊田市の報告書（伊藤倫文会員）に

オンブズマン大賞！

全国市民オンブズマン連絡会議では、弁護士、 公認会計士、税理士らが包括外部監査評価班を結成し、毎年、全実施自治体の包括外部監査報告書（以下「報告書」）を評価してきました（そもそも“包括外部監査って何？”という方は、本誌2008年７月号の特集をご覧ください。）。

平成20年度については、私も班員として参加した評価班会議の結果、伊藤倫文会員が包括外部監査人（以下「監査人」）を務められた豊田市の報告書に〈オンブズマン大賞〉（最優秀賞）を贈ることになり、８月30日に岡山市で開催された全国市民オンブズマン大会にて、伊藤会員を表彰させていただきました。

１．受賞テーマ

平成20年度の豊田市の包括外部監査は、２つのテーマで監査されました。ひとつは『教育委員会スポーツ課にかかる財務に関する事務の執行について』、もうひとつは『工事・委託を中心とした契約手続及び契約締結後の契約変更について』です。

このうち〈大賞〉となったのは、第２テーマの契約変更の報告書です（第１テーマの教育委員会スポーツ課の報告書も高評価で、〈活用賞〉となりました。）。

内容は、平成19年度の豊田市の工事契約、委託契約の契約手続の状況および契約変更の状況を調査し、その増減幅が大きい事例をサンプルとして取り上げ、契約が変更に至るまでの契約手続・契約内容、変更契約手続・変更契約内容を追って、その適法性、効率性等を監査したものです。が、200頁を超える本報告書の内容を限られた紙面でお伝えすることはできませんので、是非、報告書本文をご覧ください。豊田市のホームページからダウンロードできます。

２．受賞理由

監査対象の選定において、大幅な契約変更事例についての市議会等での指摘を受け、すぐに監査したという点で、適時性があります。また、これまで契約の締結（競争入札や随意契約によることの妥当性やその手続の妥当性等）が監査されたり、自治体行政部・課ごとの監査でひとつふたつの契約変更が取り上げられたりしたことはありましたが、初めて、契約の変更をテーマに、部・課を横断して監査したという点で、視点の新しさ・面白さがあります。

監査の内容も、調査した各事例について、契約が変更に至るまでの一連の流れを丁寧に追った上で、非常に具体的な指摘がなされ、また、市の慣例・慣行を所与のものとしていないため、内部監査では見逃されかねない指摘も見られます。このような綿密な事例分析の結果が、帰納法的に、現在行われている契約手続・契約変更手続の問題点としてまとめられ、さらに、今後不適正・不相当な契約変更がなされないための指針となるよう、市契約規則の改正案等も提案されています。

報告書の記載も、契約・契約変更についての概念や制度の説明も詳細で、このため、全体として自治体の契約・契約変更についての概説書・基本書になっていて、関係行政担当者だけでなく議員や市民にも使いやすいものになっています。

３．今後も期待しています

伊藤会員がまとめられた本報告書は、以上のような非常に優れたものでした。監査対象自治体の豊田市のみならず、他の自治体でも同様の問題はあるはずで、その対応策を示すものとして活用性は高く、是非参考にしていただきたい報告書です。

今後も、伊藤会員はじめ当会会員のみなさんが、包括外部監査の監査人・補助者として活躍され、ハイレベルな報告書を作成されることに、大いに期待したいと思います。