会報「SOPHIA」 平成21年8月号より

「特集 中高生のためのサマースクール」

今年も白熱

ティーン・コート(子ども裁判所)


法教育特別委員会 委員
成田 真

今年で5回目の開催となったティーン・コートとは、非行を犯してしまったことを認めている少年と同世代の子ども達が、裁判官・検察官・弁護人となり、少年が過ちを繰り返さないためにはどうしたらよいかを考える「子どもの子どもによる子どものための裁判所」です。少年院送致や保護観察といった枠を決める処分ではなく、少年が何をどのように学んでいくかという具体的な処分を考えてもらうことに主眼があり、過去には、「夏休み中に家族全員で3000m級の山に登ってくる」、「メイド喫茶でアルバイトする」等といった数々の名(迷!?)処分が下されてきました。

ここ数年、中学生を対象としてきたティーン・コートですが、今年は中高生を対象とし、2講座を同時並行で実施することになり、募集人数も従前の15名程度からの倍増、チーム員も13名の大所帯となりました。締切までに2講座開催に十分な数の申し込みがあるか不安でしたが、合計27名の中高生からの申込みがあり(当日参加は24名)、不安は杞憂に終わりました。ただ、高校生の申込みが1年生3名のみであり、高校生の参加者数の伸び悩みが顕著な近年のサマースクールを象徴しているようで、若干、残念でした。チーム分けについては、男女比・役割希望・年齢等、悩み多きところでしたが、中1〜2の年少チームと中3〜高1の年長チームという学年によるチーム分けを行いました。結果、年少チームは2名のみ女子、年長チームは2名のみ男子という、男女比バランスが悪いものになってしまいましたが、幸い、ほぼ全員、第1希望の配役を叶えることができました。

今年は、虚栄心から断り切れずにクラス対抗水泳大会の選手になってしまった高校1年生の女の子がプレッシャーに負け、マンガ喫茶のパソコンからインターネット掲示板サイトに、会場である「市営プールに毒物を混入しました」という書き込みした業務妨害事例を題材にしました。なぜそのような書き込みをしてしまったのか、そもそも少年にどのような問題があって水泳大会の選手に不本意ながら選ばれてしまったのか等、事案の本質に迫る白熱した尋問が繰り広げられ、少年の問題点が次々に浮き彫りにされていく様はプロ顔負け、中でも、後悔と反省を口にしながらも自らが犯した非行の重大さをしっかり認識できていない少年に対し、年長チームの裁判官から、「あなたは本当に反省していますか?とても心から反省しているようには見えません」との厳しい補充尋問がなされたのは圧巻でした。子ども達の真剣で白熱した尋問は、山田麻登会員の名シナリオと少年役の市川裕子・脇田あや両会員の綿密な役作り・熱演の賜物です。ありがとうございました。

注目の処分内容(一部抜粋)は、「市営プール・マンガ喫茶・学校・友人に両親とともに謝罪に行く。カウンセリングを受ける。裁判所から母親に少年の相談によく乗るよう勧告する」(年少チーム)、「家族で市営プールに謝罪に行きプール掃除をする。父親(元国体水泳選手)に水泳を教えてもらい、来年の水泳大会でリベンジする」(年長チーム)というものでした。少年の虚栄心を逆手にとって苦手なものを克服させてしまおうという年長チームの発想には脱帽というほかなく、裁判所の役割と力量に対する年少チームの厚き信頼には心洗われる思いでした。

果たして来年はどんな名(迷!?)処分が下されるのか、今から楽しみです。