会報「SOPHIA」 平成21年1月号より

特集 就職最前線(前編)

大阪弁護士会の就職の現状
〜大阪弁護士会副会長 和田秀治弁護士に聞く

   会報編集委員会 

会報 和田弁護士は、大阪弁護士会における修習生の就職問題についてどのように関与されていますか。
和田  私は修習委員会の委員でしたが、その後、平成18年6月に「弁護士の就職支援に関するワーキンググループ」が設置された際、私は修習委員会から派遣されました。この時以来この問題に関って来ています。今年度は、副会長として、司法修習生及び弁護士の就職支援に関する特別委員会、新人独立弁護士支援検討プロジェクトチーム(以下、支援PTと略す)を担当しています。この支援PTは平成20年6月に設置しましたが、この設置は法曹人口問題と関連付けられる形でマスコミにも取り上げられました。
会報 大阪弁護士会における最近の登録者数の推移を教えて下さい。
和田  次の通りとなっています。
 平成17年10月(58期が主 )   99名
 平成18年10月(59期が主)   146名
 平成19年9月(現60期が主)  143名
 平成19年12月(新60期が主)  107名
会報 現行・新61期の登録状況及び就職状況を教えて下さい。
和田  現行61期の登録者は平成20年9月17日時点で56名です。新61期は、12月22日時点で159名です。
 大阪配属の修習生で就職が決まっていない人は、現行61期では平成20年11月時点で4名で、うち1名はその後決まったようです。
 新61期については日弁連から情報をもらっておらず分かりません。ただ、現在就職先が決まらずに大阪で就職活動を続けている人も何人かいると聞いています。
 最近の就職活動は、時期が前倒しになっており、事務所を30ヶ所位回ると聞きます。
会報 いわゆる「即独」「ノキ弁」等新形態による登録の状況を教えて下さい。
和田  即独の人は、現行60期で3名、新60期で2名、現行61期で1名、新61期で1名いることが分かっています。
 今までの即独の人は最初から就職するつもりがなかった人が多かったと思いますが、これからは就職活動をしたけれども就職先が決まらず即独になったという人の数が増えると思います。
 ノキ弁の人数は把握していません。
会報 弁護士会としては即独等の方々への支援をどのように行っていますか。
和田  大阪弁護士会では、支援PTを設置しました。この支援PTは、@独立時の資金及び物的設備に対する支援、A業務開拓支援、B仕事の事務処理支援、Cその他OJT支援の4本を柱としています。この支援PTには即独した人自身にも加わってもらっています。
 昨年12月に提出された報告書の提言の中では既に、会館負担金の支払方法の緩和、新人独立弁護士のメーリングリストの開設、開業に役立つ情報提供のための説明会実施等、決定したものもあります。
 まだ検討中のものとしては、新人独立弁護士の希望者に対して既存事務所において約6か月程度の養成を行うというものがあります。OJTにより、弁護士の技術、経理、弁護士倫理の習得を目指すものです。実現するためには既存事務所には有償で依頼するのか、期間終了後の事件の扱いをどうするか等これから更に細部を検討する必要があります。
会報 従来の実務修習の延長のような感じですね。大阪弁護士会による修習生に対する求人情報等の提供はどのように行ってきましたか。
和田  ホームページで求人、求職情報を掲載しています。
 また、従来就職説明会は7会派がそれぞれ個別に行ってきましたが、個別に行うと修習生が何度も参加しなければならず大変なので、弁護士会と派閥の共催により平成19年から合同説明会を行うようにしました。弁護士には、派閥を通じて参加を呼びかけています。先月行われた説明会では参加事務所は資料参加も含め41でした。修習生は315名が参加しました。
会報 ホームページでの求人・求職の登録数を教えて下さい。
和田  平成20年12月15日時点で、求人が46事務所、求職が286名です。
会報 企業内弁護士の就職に関する情報はどうでしょうか。
和田  企業の求人情報もホームページに掲載しています。ただ、あまり多くはないです。
 昨年12月の合同就職説明会では企業にも参加を呼びかけ、7社の参加がありました。
 企業内弁護士と修習生の懇談会、企業採用担当者と関連委員会との懇談会、企業採用担当者と修習生との懇談会も実施し、企業への就職についても促進を図っています。
会報 企業内弁護士は就職の受け皿となっていますか。
和田  新61期では平成20年11月時点で5名の就職を把握しています。多少は受け皿になっていると思います。
会報 弁護士会として個別に修習生の就職を面倒みるということはしていますか。
和田  昔と違い人数が多いので個別的対応は不可能です。また、修習生の就職を扱うのが修習委員会ではなく、修習生と人的なつながりがない就職支援に関する委員会になりましたので、就職を個別に斡旋するということはありません。
会報 最近の勤務弁護士の初任給は今どれくらいでしょうか。
和田  調査していないのでよく分かりませんが、印象としては550万円位が一番多いのではないでしょうか。3年くらい前と比べて下がっているように思われます。修習生に聞いた話では200万円というところもあったとのことです。
会報 最近は短期間で事務所を辞める方も増えていますが、これは何が原因でしょうか。
和田  就職難であるということと修習日程上の制約から修習生が就職活動を余裕をもってできていません。修習生同士も人的関係が薄くなり情報交換が以前のようには行われていないようです。そのため、入所してから初めて相性が合わないことが分かり短期間で独立する人が増えているようです。短期間で地方へ登録替えをする数が増えているのもその辺りに原因があるように思われます。
 支援PTの「新人弁護士支援」というのは即独の人だけでなく、このように短期間で独立した人も対象に考えています。
会報 大阪には堺と岸和田に地裁支部がありますが、支部での弁護士需要が就職の受け皿とはなっていませんか。
和田  弁護士1人当たりの事件数は支部の方が多いと思いますので、需要はまだあると思います。ただ、堺は大阪市内からすぐですし、岸和田は大阪市内と和歌山から行くのが大変ではありませんので、支部で極端に弁護士が不足しているわけではありません。
会報 就職問題について弁護士会としてどのように取り組んでいくべきであると考えますか。
和田  弁護士の質は依頼人に影響を与えますし、弁護士全体の信頼にも関わることであり他人事ではありません。弁護士会としてフォローが必要だと思います。単に自由競争ということで放置すべき問題ではないと思います。
会報 本日はお忙しい中ありがとうございました。




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